2019 Fiscal Year Research-status Report
『オプス・ポストゥムム』の研究-フィヒテ、シェリング、『エーネジデムス』との関係
Project/Area Number |
18K00025
|
Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
内田 浩明 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90440932)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 『オプス・ポストゥムム』 / カント / シェリング / エーテル演繹 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度の「研究目的」と「研究計画」は、シェリングの自然哲学を視野に入れながらカントの『オプス・ポストゥムム』との比較考察を行うことであった。 当年度も、その研究計画にそうかたちで研究を遂行した。具体的には、これまでの研究を発展させるべくシェリング哲学との関係に関しては、とりわけ彼の『自然哲学に関する考案(Idee)』等(1797年初版)をはじめとした自然哲学に加え、『超越論的観念論の体系』(1800年)も加味しながら『オプス・ポストゥムム』の読解に努めた。 その成果としては、シェリング協会主催の『日本シェリング協会大会』第28回 於 富山大学 2019年7月6日の松山壽一氏とのクロス討論が挙げられる。当該の口頭発表では、いわゆるカントの「エーテル演繹(Ätherdeduktion)」を含め、『オプス・ポストゥムム』の初期から中期の草稿の概要をまず提示し、カントの「自己定立」や「直観概念」とシェリング哲学との差違について開陳した。より詳しく述べれば、カントの「自己定立論」は、フィヒテの「知的直観」を基礎に据えたシェリングとの「自己定立論」とは、表現こそ類似する(例えば、「英知的自我の感性化」などが挙げられる)ものの、別概念であること、およびシェリングがとりわけ有機体論に関してカントの『判断力批判』から多大な影響を受けているとはいえ、状況証拠からすれば最晩年のカントが「電気、磁気、化学」という最新の科学をシェリングほど積極的に自らの学説には取り入れていないこと等を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シェリングの初期自然哲学について著作が多く、しかも化学・生物学が急速に発展する時期と重なっており、シェリングが具体的にどのような書物を読み、その知見を得たのかを特定することに難渋し、しかもコロナ関連で当初計画したより研究が若干遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も『オプス・ポストゥムム』とシェリングの自然哲学との関係を究明しつつ、研究計画との関連から、ラインホルトやシュルツェの『エーネジデムス』との関係を解明してゆく予定である。
|
Causes of Carryover |
もともと2020年3月に発表予定であったが、コロナ関連で中止になったことやコロナの影響により、出張や文献購入もままならない状態に陥ったため。
|
Research Products
(1 results)