2021 Fiscal Year Research-status Report
近現代フランス倫理思想に基づく「自己愛」概念の包括的研究
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18K00028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村松 正隆 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (70348168)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ルイ・ラヴェル / 自己愛 / 沈黙 / ミシェル・アンリ / フランス・スピリチュアリスム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、Louis Lavelleのテキストの読解を進め、その存在論から導き出される言語の倫理を明らかにする作業を行い、これを論考としてまとめた。その成果は、"La Participation lavellienne a-t-elle une signification actuelle ?"(「ラベルの「参与」は、現代的意味を持つか?」と題された論考にまとめられ、第38回ASPLF(フランス語圏哲学連合)大会において発表された(6月10日、Zoom)。この論考の中では、ラヴェルの存在論と言語の関りを明らかにし、特に、「働き(Acte)」の概念が、そのまま一種主体に対する「呼びかけ」の概念と結ぶついたことを論じた上で、我々が持つべき態度としての「沈黙」の重要性を分析した。また、ラヴェルが強調する、他者との言語的交流の条件としての「霊的な空間」といった概念の意味と、その思想史的意義を論じた。ラヴェルによれば、私たちは通常の社会的なコミュニケーションにおける言語に捉われることなく(こうした言語使用においては、私たちは常に、自己愛によって自己を飾り立てることへと駆り立てられるから)、自己の内面のうちに立ち戻り、「働き」の声に耳を傾ける中でこそ、逆説的に、他者との真のコミュニケーションの可能性が開けるのである。 これらはいずれも、この研究の主たるテーマである「自己愛」の分析とそこからの離脱を可能にする技法を巡ってなされた論考である。 また、2022年度に公刊される予定の『ミシェル・アンリ読本』に寄せるために、ミシェル・アンリの小説における自己性を巡る論考、ならびに、フランス哲学における自己感情を巡る作成した。これらは2022年8月に公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の集大成としてのシンポジウムなどを行う予定であったが、外的な状況のために確定的な予定を組むことができず、予定していたシンポジウムを実施できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度においては、フランス・スピリチュアリスムにおける「自己愛」の諸相をまとめるために、これをテーマとする論考をまとめると同時に、何らかの形(可能であればシンポジウム形式)で、この分野に通じた他の専門家を招いてのシンポジウムを実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナによる状況の変化により、開催を予定していたシンポジウムなどの企画が十分に立たなかったためである。 本年度は、関連する資料を購入の上、研究を進めるとともに、予定していたシンポジウムを開催する予定である。
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