2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the idea of "Self-love" in the modern and contemporary French philosophy
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18K00028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村松 正隆 北海道大学, 文学研究院, 教授 (70348168)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミシェル・アンリ / 文学と哲学 / ルネ・ジラール / スピリチュアリスム / 自己愛 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、「自己愛」概念と密接に関わる「主観性」の概念に焦点をあてつつ継続してきた、ミシェル・アンリの「自己性」を巡る研究の成果をまとめ、編者として『ミシェル・アンリ読本』に交換するに至った。これは現状では、ミシェル・アンリの哲学の総合的な紹介を果たす著作となっている。 その中の「ミシェル・アンリとフランス哲学」では、自己性を感情による切り詰められた自己知に定位するマルブランシュやルソーの議論とミシェル・アンリの議論が呼応することを明らかにし、この面で、アンリがフランス哲学の伝統を引き継ぐこと、また、「自己」を切り詰めた形で捉えることで、自己愛を逃れる側面があることを明らかにした。 また、従来十分には紹介されてこなかったミシェル・アンリの四つの小説の紹介と分析を行い、「自己」は、「悪」「文明」「科学」といった契機との出会いや交渉の中でどのように振る舞うべきであるとアンリが考えていたのか、またその思索をどのように形象化したのかを明らかにした。さらに、これまで論じることが困難とされてきた、アンリの最後の小説『不躾な死体』についても、そのモデルとなる人物や事件を明らかにする作業を行い、この小説が一見推理小説という形をとりながらも、実際には優れた同時代批判であることを明確にした。 その他、同書の中では、アンリとルネ・ジラールとの対比を行った。一件並べて論じられることの少ない二人ではあるが、人間の欲望の暴発を人間社会の問題の根幹に見据え、そうした欲望のメカニズムを見つめ認識しつつそこから離脱することを救済のための重要な道筋と考えていることを明らかにした。即ち、二人の思索は、「自己愛」という主体にまつわる契機を理解し、またそれがもたらす害悪の離脱を助ける指針となり得るものである。
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