2021 Fiscal Year Research-status Report
Inclusive Philosophy: A Theory and Practice created through Collaboration with Designers
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18K00033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶谷 真司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50365920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 哲学 / 対話 / デザイン / インクルージョン / 共創 / 共同体論 / 地方創生 / 教育と福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論面では、私が提唱している共創哲学の根幹となる部分、共創的(inclusive)であることがどのようなことなのかについての考察を深めた。その成果の主要な部分は、『実存思想論集XXXVI 哲学対話と実存』(実存思想協会編)で論文「共に考えることと共にいること――哲学対話による新たなコミュニティの可能性」としてまとめた。そこで特に重要な点は、インクルーシヴであるために、私たちは相互の理解や寛容さを求めるが、それがどのような状態なのか、どうすればそれができるのかについての実践知が欠けていて、しかもそれが理論的に軽視され、たんなる「コツ」や「ノウハウ」のようにしか扱われていないことである。また通常のコミュニティは共通点や類似点に基づいて作られるが、哲学対話から構想されるコミュニティは、むしろ相違点や差異に基づいて作られるという新たな共同体論を含意していることが明確になった。 実践面では、引き続きコロナ影響で対面での活動は難しかったが、一部は対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式での開催も行い、アフター・コロナのノウハウを積み上げることができた。哲学対話に関連する講演やワークショップは8つ、主催イベントは10ほど行い、共創哲学を実践する新たな場を多く開拓することができた。2021年度で特筆すべきは、福祉や医療、映画、家族など、これまであまり関わってこなかった領域の人たちとコラボレーションができたことと、また教育、地域おこし、デザインなど、これまで深く関わってきた人たちと総括的な議論をする場を作れたことである。 成果物としては、〈哲学×デザイン〉プロジェクトとして進めてきた活動の総括として、これまでイベントに登壇した人たちから原稿を集め、ブックレットを作っている(年度内に公刊できなかったが、もう一年延長できたので2022年度に公刊する予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論面では、インクルーシヴであるための実践知の理論的重要性と新たな共同体論を明確に概念化し、それを『実存思想論集』という専門誌で発表できたのは大きな成果であった。 実践面では、引き続きコロナの影響で、海外での活動はできなかったが、そのぶん国内でのイベントを充実させることができ、そのなかでこれまで関わらなかった様々な分野の人とコラボレーションすることができた。また対面とオンラインを組み合わせたハイブリッドでのイベントを開催したので、今後のよりインクルーシブなイベントのノウハウを身につけることができた。また公刊までは至っていないが、〈哲学×デザイン〉プロジェクトをいったん総括するブックレットのために、これまでの登壇した60名を超える人たちから原稿を集めることができたのも、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の延長期間となる2022年度は、それほど多くの予算が残っているわけではないので、まずは2021年度に原稿を集めたブックレットをできるだけ早い時期に完成させることを目指している。また残りの予算を使って、今年度は対面での活動やハイブリッドでのイベントをさらに新しい分野の人たちと行いたい。理論面では、デザインと哲学の関連について考察を深め、それを知識論として再構築し、共創哲学の基礎をより強固なものとすべく研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナの影響のため引き続き、国内外への出張が困難であり、多くの経費を要する活動ができなかった。残額に関しては、この間の活動を総括するブックレットの編集・印刷費として多くを使い、残りは講演会の謝金や国内出張費として使用する予定である。
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