2018 Fiscal Year Research-status Report
Model Construction of "Philosophical Dialogue" in Medical Fields
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18K00037
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西村 高宏 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (00423161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近田 真美子 福井医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00453283)
田村 恵子 京都大学, 医学研究科, 教授 (30730197)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 哲学対話 / 臨床哲学 / 哲学プラクティス / 医療現場 / 精神保健 / イタリア / 哲学カフェ / みんくるカフェ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、交付申請書の「研究の目的」および「研究実施計画」に記載のとおり、医療現場における哲学的な対話実践を、本研究の分担者それぞれの専門領域(精神医療、災害看護、がん看護および終末期医療領域、認知症患者)もしくは地域において数回程度開催した。具体的には、石巻赤十字病院などの医療組織や、日本災害看護学会および日本臨床倫理学会などの関連学会において、院内の職員や研究者などとともに哲学対話(もしくは学会発表)を行ない、医療における哲学対話の可能性について、医師や看護師、さらにはPSWやMSWなどといったさまざまな医療専門職からの意見を聴取した。 上記の実践活動と並行して、当該年度の研究計画として掲げていた「医療現場における哲学対話の理論的な基礎付け」の作業にも具体的に着手した。研究の進め方としては、このところ医療現場において積極的に取り入れられつつある対話実践、たとえばオープンダイアローグや医療メディエーション、さらには2000年以降に臨床倫理の切り口からオランダなどにおいて取り組まれはじめた「医療チームが主体となって病棟内で行なう解釈学的対話のケース検討方法(MCD)」などに関連した文献を整理し、本研究の軸とも言える「哲学プラクティス」の考え方との差異を明確化にする作業を行なった。 また、これらの作業をいっそう理論的に基礎付けていくために、本研究の軸である「哲学プラクティス」の観点から、おもに精神保健領域における哲学対話の可能性について斬新な研究活動を展開しているイタリア(トリエステ)の精神保健関連の施設(サンジョバンニ病院跡地にある精神保健局やバルコラ精神保健センター、マッジョーレ病院内にあるSPDC)や関連団体(Scoula di filosofia di Trieste)を視察し、現地の哲学プラクティショナーや関係者たちと積極的な意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、本研究の代表者および分担者は、これまで自身が行なってきた対話および研究活動をさらに展開させ、それぞれの専門の医療領域において積極的な対話実践を行なってきた。また、それとは別に、〈地域〉のなかに対話という営みを挿し込み、「がんを体験した人、またその家族や親しい人たちとともに、医療専門職が日頃の悩みを語り、対話をとおして考える場」(京都)も拓いた。そのほかにも、医療従事者や一般市民とともに、医療現場における諸課題を問い直す哲学対話「てつがくカフェ『医療とケアを問い直す』」(福井、仙台など)や、ワールドカフェ形式による医療者と市民との対話(みんくるカフェ)なども東京を中心に各地で開催している。 当該年度は、研究メンバーにおけるこれまでの活動実績および研究の成果を確認・共有し、それらを医療現場における『哲学的対話実践』モデルの構築」という本研究の目標にどのように接続していくかについて研究連絡会(2019年3月、於:京都大学医学部)を開催し、より具体的な意見交換を行なった。その結果、今後、〈研究〉と〈実践〉の両側面からの連携体制の構築および強化の道筋を共有できた。そういったことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度において科研メンバー間で確認・共有した〈理論〉の内容と〈実践〉に関する方法論を、それぞれの専門領域においてさらに展開させ、最終年度において「医療現場における哲学対話実践モデル」の具体的な方策を示せるような議論を開始する予定である。 1) そのためにも、積極的にシンポジウム等を各地で開催し、科研メンバーのみならず様々な領域の実践家や研究者たち、さらには患者やその家族などからも、医療現場における「哲学的対話実践」の可能性および不可能性に関して意見を聴取できる場を設ける。 2) また、医療現場における「哲学的な対話実践」の理論的な基礎づけの作業をさらに深化させていく必要があることから、具体的に、当該年度に調査に行ったイタリア・トリエステの精神保健領域における哲学対話、たとえば「系譜学(Genealogica)」の対話手法などについて、それ以外の対話の形式(未来語りのダイアローグやオープンダイアローグ、MCD)などの方法論など比較・検証しながら、一つの成果としてまとめる。そして、その成果の一部を、国内外の関連学会などにて発表し、さらに多くの意見を得る。 3) そして、新たな視点として、最近国内にも取り入れられつつある「倫理コンサルテーション」の実際を確認し、具体的に医療現場のなかに「哲学的な対話実践」を介入させる手続きについて、考察する。 4)当該年度のメンバー・ミーティングの際に共有した医療現場における「日常倫理(Everyday Ethics)」導入の可能性について、福井大学医学部などを中心に研究会を立ち上げ、意見交換を促進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下の通りである。 1) 当該年度の研究計画が、おもに研究代表者および研究分担者がこれまでそれぞれの専門領域において行なってきた対話実践を継続し、その成果を共有することに軸足を置いていたため、あらためて対話実践のための経費がさほどかからなかったこと、 2) さらには、医療現場における「哲学対話実践」を理論的に基礎付ける際に必要な書籍や研究資料などが、研究メンバーそれぞれの施設においてあらかじめ所蔵されていたこと、などがあげられる。 今後は、これらの成果をもとにさらに別の領域への対話実践や理論的な基礎付け作業を展開させる必要があり、生じた次年度使用額をその経費に積極的に活用していく予定である。
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Research Products
(6 results)