2019 Fiscal Year Research-status Report
Model Construction of "Philosophical Dialogue" in Medical Fields
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18K00037
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西村 高宏 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (00423161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近田 真美子 福井医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00453283)
田村 恵子 京都大学, 医学研究科, 教授 (30730197)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 哲学対話 / 臨床哲学 / 哲学プラクティス(哲学実践) / 医療現場 / 精神保健 / 哲学カフェ / 災害医療 / 終末期医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、申請書に記載のとおり、医療現場における哲学的な対話実践を研究の分担者それぞれの専門領域(精神医療、災害看護、がん看護および終末期医療領域、認知症患者)において積極的に開催した。 とくに研究代表者の西村は、福井大学医学部とも連携しながら、一般市民と医療従事者のあいだの垣根を越えた「医療とケアを問い直す」哲学対話の場を継続的に開催するとともに、石巻赤十字病院などの医療機関や、日本デイケア学会および日本エンド・オブ・ライフ・ケア学会、さらには日本医学哲学・倫理学会などの関連する学会において、院内の職員や研究者などとともに哲学対話(もしくは学会発表)を行ない、医療現場における哲学対話の可能性について様々な医療専門職から意見を聴取することができた。そして、そこで得られた多くの意見を、研究会やシンポジウム等をとおして他の研究分担者らとさらに議論を重ね、「医療現場における哲学対話の理論的な基礎付け」とそのモデル構築の作業に具体的に着手した。その成果の一部は、2019年10月にポーランドのクラクフで開催された学会 (XVI Annual Conference of the International Society for Clinical Bioethics)にて口頭発表し、欧州の医療倫理学者や哲学プラクティショナーらとも積極的な意見交換を行なう機会を得た。 また、本研究は2年目に入り、前年度には着手できなかった災害医療における哲学対話の可能性についても研究活動を開始した。具体的には、2019年10月に、本研究の研究協力者である太田圭祐氏(安城更生病院)を福井に招き、「東日本大震災と福島第一原発事故の最前線 病院での実際、そして福井県は?」と題したシンポジウムを開催した。次年度は、これらの成果をさらに吟味し、医療現場における哲学対話実践モデルの構築作業を成し遂げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、研究代表者および研究分担者は、これまでそれぞれが独自に行なってきた対話実践もしくは研究活動を「本研究の目的」からあらためて編成しなおし、医療現場の現状をさらに考慮した哲学的対話実践の試みに着手した。具体的には、本研究の研究協力者である医師の鈴木聡氏(石巻赤十字病院副院長)や太田圭祐(安城更生病院・脳血管内治療医長)らとの哲学対話および意見交換会は本研究にとって極めて貴重な機会となった。そして、そのような取り組みの中間的な成果として、研究代表者の西村が、2019年10月にポーランドのクラクフで開催された学会 (XVI Annual Conference of the International Society for Clinical Bioethics)において研究発表を行ない、欧州における医療関係者および哲学プラクティショナーたちとも積極的な意見交換ができたことは、本研究が順調に進んでいることの理由として捉えることができる。 あわせて、前年度にはなかなか着手できていなかった災害医療やがん医療にかかわる医療・ケア領域の関係者(たとえば一般社団法人「哲学相談おんころカフェ」や「第2の患者会すろーす」など)とも緊密なネットワークを構築し、医療現場における哲学対話の場を共同で開催できたことも収穫であった。そして、現時点での取り組みの成果を発表する機会として、2020年2月に、京都大学医学部において、本科研主催のシンポジウム「がん医療における哲学対話の試み」を開催し、多くの医療従事者や患者、またはそのご家族などの参加者とともに実のある意見交換ができた。本科研の最終年度となる令和2年度では、これらの研究成果を着実にステップアップさせ、医療現場における哲学対話モデルの理論的基礎付けとモデル構築の作業を成し遂げたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度も含め、これまで2年に亘る研究活動を行なっていくなかで、医療現場における哲学対話実践に関する各医療領域におけるニーズや方法論などに関する大まかな〈見取り図(暫定的なモデル)〉が獲得できた。本研究の最終年度にあたる次年度では、それらの〈見取り図〉を実際の医療現場に的確に適応可能なモデルとして機能するよう、精査する作業に入る予定である。 1) 具体的に、それぞれの研究分担者が、各機関の研究倫理審査委員会などに研究申請を行ない、上記の〈見取り図(暫定的なモデル)〉をもとに、多くの医療機関において、現場の医療従事者らとともに(場合によっては患者およびその家族も含める)哲学的対話実践を行ない、現場の医療従事者や職員などからのアンケート調査などをとおして、対話実践の方法論等について精査を行なう。 2) そして、そこで得られた成果をさらに研究分担者どうしでブラッシュアップし、関連する学会等で発表し、本研究の当初からの目的である「医療現場において実質的に適応可能な哲学的対話実践モデルの構築」を図りたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下の通りである。 1) 当該年度の研究計画が、おもに研究代表者および研究分担者がこれまでそれぞれの専門領域において行なってきた対話実践を継続し、その成果を共有することに軸足を置いていたため、あらためて対話実践のための経費がさほどかからなかったこと 2) さらには、医療現場における「哲学対話実践」を理論的に基礎付ける際に必要な書籍や研究資料などが、研究分担者それそれの施設においてあらかじめ所蔵されていたことなどがあげられる。 次年度は、これらの成果をもとにさらに別の領域での対話実践や理論的基礎付けの作業を展開させ、最終的な成果を国内外の学会等で発表する予定である。生じた次年度使用額をその経費に積極的に活用していく予定である。
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Research Products
(5 results)