2021 Fiscal Year Research-status Report
Model Construction of "Philosophical Dialogue" in Medical Fields
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18K00037
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西村 高宏 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (00423161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近田 真美子 福井医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00453283)
田村 恵子 京都大学, 医学研究科, 教授 (30730197)
孫 大輔 鳥取大学, 医学部, 講師 (40637039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 哲学対話 / 臨床哲学 / 哲学プラクティス(哲学実践) / 医療現場 / 哲学カフェ / 精神保健 / 災害医療 / 終末期医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の影響により、本科研の最終目的である、各診療科にあわせた「哲学対話実践モデル(暫定的なモデル)」の効果に関するより実践的な検証作業が困難となった。そこで、昨年度同様、当該年度においても、実際の医療現場での「哲学的対話実践モデル」の検討作業をいったん保留し、本科研主催のオンライン哲学対話およびシンポジウムと、研究分担者個々人がそれぞれに所属する関連学会でのシンポジウム・ワークショップの企画・開催をとおして、現在構築中の対話実践モデルに関する意見交換の機会をつくり、他の研究者や臨床家からの批判的な意見を積極的に集約していく作業を継続して行った。なかでも、2021年10月にオンラインで開催した公開シンポジウム「医療現場における『リフレクティング』の可能性を問う」では、1980年代以降、ノルウェーの臨床家トム・アンデルセンらによって推し進められてきた「リフレクティング」という会話手法を医療・福祉現場に採り入れ、ピラミッド型の階層的な序列関係へと硬直化しがちな医療現場における「専門職者間・組織間の溝(ディスコミュニケーション)」の解消を試みてきた矢原隆行先生(熊本大学人文社会科学研究部)を招き、さまざまの職種の医療従事者や哲学研究者などを含め、のべ130名近くの参加者とともに医療現場における対話実践の可能性/不可能生について意見交換を行うことができたことは当該年度における大きな研究成果の一つと言える。そのほか、研究代表者および分担者は、てつがくカフェ「医療とケアを問い直す」(2回開催)、京都がん看護専門看護師(OCNS)会での「対話と傾聴」に関する講演、名古屋造形大学での「臨床哲学」に関する特別講義、さらには第27回日本看護診断学会学術大会特別企画哲学カフェ「看護と哲学」にそれぞれ登壇し、医療現場における哲学対話実践の可能性について意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、各診療科にあわせた「哲学的対話実践モデル(暫定モデル)」に関するより実践的な効果測定の作業が新型コロナウィルス感染症拡大の影響により困難となったことから、本研究の現在までの進捗状況を、昨年度に引き続き「やや遅れている」と評価した。 ただ、当該年度においても、そのような困難な状況のなかで、個々の研究分担者がそれぞれに所属する関連学会や団体においてシンポジウムやワークショップを開催し、さらには研究論文等を発表するなどして、「医療現場における哲学対話実践モデル」に関する意見交換の機会を豊富につくり、他の研究者や医療従事者からの批判的な意見等を集約する作業が継続された。研究代表者および分担者のそれぞれが参加した主な学会等については、以下の「研究発表(令和3年度の研究発表)」に記載しているが、それらの学会シンポジウム等での意見交換等をとおして、個々の研究メンバーがそれぞれに「哲学的対話実践モデル」に関する手応えやさらなる問題点を感じたこともあり、当該年度の成果も含め、再度、実際の医療現場に赴いて「哲学的対話実践モデル」の効果検証を行ない、最終的な「哲学的対話実践モデル」を構築する作業を丁寧に行うべきとの見解がメンバーどうしで共有され、本研究を次年度(令和4年度)まで「延長申請」することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究が遅延したことにより、本科研は、再度、令和4年度までの期間延長の申請手続きをとることとした。今後、感染拡大の状況が一気に落ち着くとは予想し難いが、①これまでの重要な成果を再度綿密に検討するとともに、②可能なかぎり実際の医療現場において「哲学的対話実践モデル」の効果検証を継続して行なう予定である。上記2つの方策を同時に走らせることをとおして、はじめて、本科研の最終目的である、各診療科にあわせた「哲学的対話実践モデル」をより効果的なものとして構築できるものと考えている。そのために、より臨床でのフィールドワークが可能となるように、当該年度7月に、本科研の研究分担者である鳥取大学医学部地域医療学講座(日野病院総合診療科・医師)の孫大輔を中心に、「医療現場に対話実践を導入する試み」に関する研究倫理審査を受け、承認されている。 今後は、研究メンバー間で「哲学的対話実践モデル」の枠組み等に関する修正事項を早急に検討し、修正したモデルの効果を、京都大学医学部や日野病院(鳥取県)、さらには他の医療機関などで複数回開催を予定している「医療従事者との哲学カフェ」をとおして徹底的に検証したい。それにあわせて、現在、本科研メンバー間において、哲学対話の効果測定のスケールや「哲学的対話実践モデル」修正版も作成中である。修正版では、主に、①急性期:ICU・救命救急病棟、外科病棟(脳外科・呼吸器外科・心臓外科・消化器外科など)、②慢性期:内科、難病、緩和ケアなど、さらには③急性期から慢性期:母性、小児領域、精神科、④地域:クリニック・診療所・訪問看護ステーション、さらには病院外などといった4つの大まかな枠組みを編成し、それぞれの枠組みにおける哲学的対話実践導入の意義や具体的な方法、タイミング等について最終調整を行なう計画である。
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Causes of Carryover |
2020年3月以降から感染拡大が本格化した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、特別措置法に基づいた緊急事態宣言が発出されるなど、医療の現場は通常診療にくわえてコロナ診療にも対応せざるをえない状況となる。それにともない、本科研の最終目的であった、前年度までの研究成果をもとに研究分担者および研究協力者間で準備した、各診療科にあわせた「哲学対話実践モデル」が実際の医療現場においてどのような効果をもたらしうるのかに関する実践的な検討作業も困難となった。そのため、研究代表者および研究分担者が、最終年度に、それぞれの医療専門領域で開催予定であった哲学的対話実践(哲学カフェ)を中止せざるを得なくなり、そのための予算を活用することができなかった。本研究は、次年度(令和4年度)までの「延長申請」手続きを行なっている。
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Research Products
(24 results)