2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Formation and Collapse of the Naturalistic Basic Logic of the Early Modern Western Theory of Ideas
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18K00039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (30155569)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デカルト / ロック / バークリ / ヒューム / カント / 観念 / 観念説 / 自然主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の最も重要な課題である「カントの超越論的観念論の論理をどう見るか」について、研究を進めた。この件については、すでに『カント哲学の奇妙な歪み』(岩波書店、2017年)や『カント批判』(勁草書房、2018年)等でその基本的視点を提示しているが、ここではさらに立ち入って、カントが若い頃から関わっていた自然科学の研究が、どのような仕方で、科学の基礎学たるべき形而上学を準備するための『純粋理性批判』の議論に入り込んでいるかを考察した。心像論者ではないカントが心像論者であるヒュームの言説からショックを受けて「独断のまどろみ」から目覚めたというカントの説明は、現代の研究水準からすれば実に奇妙な説明に見える。また、彼は、経験は必然性を教えないとして、私たちの基本的な考え方をある仕方でもともと私たちの知的機能の中に組み込まれているとしながら、その組み込まれ方を説明するのに「胚芽」や「素質」といった当時の発生学の用語を用いる。こうしたカントの議論の再検討によって、デカルトからカントに至る西洋近代観念説の基本論理の変容の実際を、具体的に確認した。そのさらなる成果は、国際誌での公表に向けての準備が、今なされつつあるところである。 5年間の本研究を通して、デカルト、ロック、バークリ、ヒューム、カントをはじめとする多くの西洋近代の代表的哲学者がその思想の基盤とした「西洋近代観念説」の基本的枠組みが、古代ギリシャの原子論の近代における復活と連動するなど多重的な仕方で自然科学的基盤を持つものとして形成され、その意味で「自然主義」的であったこと、そして、それが、いくつかの異なる仕方でその自然主義的基本論理を歪めて変質していったことにつき、その推移の基本的な方向性が明らかになった。その成果は、いくつかの著書、論文、招待講演として、公表することができた。
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Research Products
(1 results)