2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of community, culture and multiculturality through the perspectives of phenomenology of life, clinical philosophy and social science
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18K00042
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
川瀬 雅也 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (30390537)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多文化性 / 間文化性 / 共同体 / 生の現象学 / 精神病理学 / 宗教 / 国家論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際社会における錯綜した多文化社会の状況を背景として、文化を人間の共同性に基づくものと理解し、この共同性や文化についての人文社会学的研究、および、生の現象学と臨床哲学における哲学的解釈をもとに、現在の多文化社会化の本質的要因と今後の多文化社会で要求される共同化のあり方について検討するものである。 そのうち、2018年度には、宗教的対立が社会的抗争や暴力に結びついている現在の社会的状況を踏まえて、宗教性と共同性の関係に焦点をあて、文化人類学、生の哲学、精神病理学、そして、精神療法の観点から、間文化性と宗教性の関係について研究した。 また、2019年度には、生の現象学における共同体論に焦点をあて、それを人文社会学的な共同体論と接続することで、哲学的な共同体論に社会科学的な肉付けを行うとともに、社会科学的な共同体論が論じる共同体の歴史的変遷を、哲学的、現象学的な観点から掘り下げて検討することを試みた。それによって、前近代から近代にかけての共同体の変遷の意味と、そこでの個人の存在の意味の変遷を、その本質的な側面から解明した。 そして、最終年度となる2020年度は、全体として、コロナ禍の影響で、思ったように研究を進めることができなかったが、それでも、17、18世紀のヨーロッパの哲学者たちの人間観、および、共同体論、国家論についての研究を深めることで、本研究課題の視点そのものを歴史的に拡大させることに成功した。 17、18世紀の絶対王政期/市民革命期という社会的混乱のなかで、近代の哲学者たちが、個々の人間存在の意味をどのように理解し、また、そこから、ありうべき共同体のあり方をいかに構想したかは、絶対的個人(この私)とその共同性のあり方についての探求を通して、文化の意味を解明することを目ざしている本研究課題にとって、たいへん有意義な比較対象を提供してくれるものであった。
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Research Products
(1 results)