2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of the Virtue ethics approach on Procreative Ethics
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18K00043
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
柏葉 武秀 宮崎大学, 教育学部, 教授 (90322776)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 倫理学 / 障害学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究第三年度の目的は、当初の計画では「新アリストテレス主義徳倫理学の理論的探求」であった。研究初年度、第二年度とParental partiality概念の解明へと研究方向をシフトしつつあったこともあり、本年度においてもParental partiality関連文献を収集し読み解く作業に従事している。 Parental partialityの問題領域は、本研究の文脈においては「非同一性問題」(Parfit)と連結している事実が判明した。出生前診に基づいて障害を持つ蓋然性の高い胎児を選択的に中絶する行為は、障害者権利擁護運動あるいは障害学から「障害者差別」との根強い批判が投げかけられている。この批判に対して反駁手段を与えるのが非同一性問題とそこから導かれる問題領域を構成する論理である。たとえばBrock(2005)は、非同一性問題におけるNon-Person-Affecting Harm Principeを援用して、将来出生する人数に影響を与えないかぎりで、障害を持つ蓋然性の高い胎児を中絶する道徳的理由を肯定しようと試みている。 Brockに典型的なある種洗練された選択的中絶正当化論に対しては、なお有力な研究者から批判されている。その批判の規範的立脚点は、非同一性問題を語る立論に見え隠れしている障害(者)観を指摘する従来の反差別論に加えて、見込み上の親が備えるべき態度さらには親の「有徳な行為」が有力になっている。Hull(2009)やLillehammer(2009)がこの徳倫理学的議論を展開するときに強調するのがParental partialityなのである。 かくして、研究第三年度にはParental partialityと非同一性問題との関係を研究し始めている。具体的成果はいまだ公刊できていないけれども、研究最終年度には生命倫理系の雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大につき、対応策をとる必要に迫られた。教育面・大学運営面に注力せざるを得ず、研究はほとんど進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間の研究計画全体を見直している。年度ごとの計画を順序立てて進めるのは難しいので、ある程度文献読解が進んだところで、発表可能となった論文(あ るいは学会発表)を優先させていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大につき、国内外出張が完全に不可能となった。そのため、計上して生きた旅費をまったく支出していない。
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