2022 Fiscal Year Annual Research Report
The mark of Scottish Enlightenment and the meaning in modern philosophy
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18K00044
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
中村 隆文 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (40466727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スコットランド啓蒙思想 / 道徳感情論 / 正義論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「スコットランド啓蒙思想の痕跡と現代的意義」というテーマのもと、18世紀のスコットランド啓蒙期のいくつかの道徳感覚論・道徳感情論の間の関連性などを分析しつつ、そこで芽生え、発展した思想というものがどういった形で現代の社会思想に残されているのかを検証し論じたものである。 研究期間にコロナ禍が発生したため、参加するはずの学会が開催されなかったり、研究が困難な状況になったりもしたが、無事に研究成果を学会にて報告したり、研究に関わる著作を刊行できたことである程度の進捗があったものと思われる。 とりわけ、2021年、2022年に開催された国際ヒューム学会(Hume Society)にて、スコットランド啓蒙に関する報告と同時に、現代分析哲学的な報告に触れることができたことは、古典研究と現代的課題との架橋といった本研究における中心的仕事に大きく寄与するものであった。 学会報告としては、2021年の日本法哲学会年次大会にて、ワークショップ「法と感情」において、「なぜヒューム哲学は法哲学のメインストリームとなりえなかったのか?」という題目で報告をし、スコットランド啓蒙における道徳感情論が、思想史においてイングランド的な理性主義の影に隠れてしまったこと、しかし、現代のリベラリズムにおける社会的能動性において情念が果たすべき役割を先駆的に論じたものであることを明らかにした。 本研究に一部関わる著作として、『物語 スコットランドの歴史』(中央公論社、2022)を上梓したが、そのなかで、スコットランド啓蒙思想におけるハチスンが、当時のカルヴァン派長老主義の神学的要素を組み込みながらも、ヒュームへとつながる道徳感情論的な議論の基礎部分を組み立てたことを指摘した。
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Research Products
(1 results)