2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on general structure of consciousness based on Husserl's phenomenology of time-consciousness
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18K00048
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村田 憲郎 東海大学, 文学部, 教授 (80514976)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現象学 / 時間意識 / 時間 / 意識 / フッサール / ブレンターノ / 時間的経験の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる2021年度には、前年度の成果を踏まえ、もう一度初期フッサールとブレンターノの関係を調査した。これまでブレンターノから離脱していく1900年代のフッサールの初期時間論の発展とそのゴールを見定める作業を行ったが、本年度では両者の関係の出発点となる、フッサールが受講したブレンターノの1884/5年の講義内容を検討しつつ(これについては2022年3月のフッサール研究会にて発表)、『論理学研究』以前のフッサールの時間論を精査した。この作業により、1905年時間講義の冒頭にあるブレンターノ批判の含意について、現状の資料にもとづく限りではほぼ余すところのない理解に到達しえたと言える。 以上を含め、本研究課題全体の成果としては以下の諸点が挙げられる。 ・近年の時間的経験の哲学における、延長モデル/把持モデル/映画モデルという3つのモデルを対比させる議論において、フッサールは把持モデルを採っているとする理解が浸透しつつあるが、実際にはフッサールの時間論には延長モデルの側面も見られ、控えめに言っても把持モデルと延長モデルの折衷説であることが明らかとなった。 ・フッサールの初期時間論は、ブレンターノ学派および関連する心理学者達との対決において彫琢されたものであり、それぞれの意義をまとめることができた。個別に言えば、その発展の道程は以下のとおりである。1) ブレンターノとの対決により、知覚作用を拡張し、時間経過を現実として捉えることが可能になった。2) 心理学者シュテルンの議論から、意識そのものが経過しているという知見を取り入れた。3) この知見によりマイノングに対し、彼の把持モデルの一面性を批判した。4) ブレンターノ学派のフーゴー・ベルクマンの議論をきっかけとして、無限に次元数が増大する問題を退けつつ、把持における構成するものと構成されるものとの合致という洞察に到達した。
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Research Products
(4 results)