2018 Fiscal Year Research-status Report
ニーチェにおける自然主義と構成主義の両立可能性に関する研究―ニヒリズムをめぐって
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18K00051
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
竹内 綱史 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (40547014)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニーチェ / ニヒリズム / ショーペンハウアー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ニーチェ哲学における自然主義と構成主義の両立可能性という問題を考察することによって、実存主義・ポストモダニズム・政治理論・分析哲学・文献研究などに分化しているニーチェ哲学研究の統一を図り、ひいては、現代哲学のありうべき方向性を探ること、とりわけニヒリズムという現代の宗教哲学的課題、すなわち人生の意味への問いに対し、暴力的な他者排除に陥ることなく答えるための視座を獲得することを目的としている。この目的に向けて、2018年度は以下のような研究を行った。 1.ニーチェのニヒリズム論を、客観的に実在する価値を求めてしまう人間の傾向(価値に関する客観主義)の問題としてとらえ、その克服の方途について検討。2.ショーペンハウアーの同情=共苦(Midleid)倫理学に対するニーチェの批判の検討。3.前期著作におけるニーチェの哲学的方法論の萌芽の検討。 1については、「客観的に実在する価値」を神に代表されるような「超越者」ととらえ、伝統的な超越の問題と接続し、ニーチェの「ニヒリズムの克服」に向けた発想を「超越者なき自己超越」として捉え直した。2については、「共感」がもてはやされる現代において再評価の進むショーペンハウアーの同情=共苦倫理学に対して、ニーチェがどのような批判を行ったのかの論点を整理した。3については、前期著作『生に対する歴史の利と害について』の歴史学批判がどのような射程を持つかを再検討した。 それ以外に、現在世界の(文献研究系)ニーチェ研究をリードするアンドレアス・ゾンマー教授(フライブルク大学)を招いて講演会を開催し、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では2018年度はF.A.ランゲや『悲劇の誕生』を扱う予定であったが、ニヒリズムの問題を考えるにあたってはショーペンハウアーの同情=共苦倫理学に対する批判が非常に大きな意味を持つことに気づいたので、そちらの検討を優先し、また、『悲劇の誕生』よりも方法論的に重要な『生に対する歴史の利と害について』を優先した。そのため、完全に予定通りとは言えないが、重要な知見を得られたので、順調に進展していると言える。 また、世界哲学会や国際ニーチェ学会で発表の機会を得、世界中の研究者と意見交換ができたことも収穫である。関西倫理学会と日本ヤスパース協会ではシンポジストとして登壇し、隣接分野の研究者たちとも様々な意見交換ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、10月に国際ショーペンハウアー協会(フランクフルト、ドイツ)で、11月には現代ニヒリズム研究センター(ピサ、イタリア)で、それぞれ発表することがすでに決まっている。前者ではショーペンハウアーの宗教哲学について、後者では日本におけるニヒリズムについて扱う予定である。まずはそれらに向けて研究を進めていくことになる。また、前年度に引き続きニーチェの同情=共苦批判を中期著作の『曙光』を中心に検討し、論文としてまとめたい。 当初の予定では今年度中にドイツ等から研究者を呼んでシンポジウムを開催することになっており、現在検討を進めているが、予定の調整等で今年度中が難しければ、来年度に延期することも考慮に入れている。
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