2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Old Indo-Aryan reduplicated present
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18K00054
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾園 絢一 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (90613662)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重複現在語幹 / ヴェーダ / 古インドアーリヤ語 / アスペクト |
Outline of Annual Research Achievements |
daa「与える」、dhaa「置き定める」の現在語幹とアオリスト語幹の用例を収集し、用法上の違いを相(aspect)、動作様態(Aktionsart)、話法(mood, Modus)などの点から検討した。
理論的にはdadaa-/dad-(<daa)などの重複現在語幹は持続的(durativ)動作を表し、(a)daa-などのアオリスト語幹は瞬間的(punktuell)又は短時間的(momentativ)動作を表すが、ヴェーダ語においてこうした差異が明確に見いだされる例は少ない。但し、ヴェーダ語やギリシア語の話法形(modal form)の用例を検討していく中で、ギリシア語の対応する重複現在語幹の命令形の中に持続的動作又は反復を表すとみなし得る例が見出された。
またdaaやdhaaのアオリスト語幹の言及法(injunctive)2・3人称はアオリスト命令法を担うことが知られているが、ヴェーダ語の用例とイラン(アヴェスタ語)およびギリシア語(ホメロス叙事詩)に在証される対応形とを比較した結果、おそらくインド・ヨーロッパ祖語の段階で、形態論上の理由から命令形は避けられ、アオリスト言及法が相(aspect)や文脈に基づいて命令を表すことが明白なため取って代わった可能性があることが分かった。リグヴェーダ以降には相の違いは見えなくなり、古風な命令形となったものと推測される。今後はi,uで重複する現在語幹の用例を調査し、重複現在語幹の全体像の把握、資料集の完成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重複現在語幹dadaa-、dadhaa- の用例を検討する際、隣接カテゴリーとの比較・分析に予想以上時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
aで重複する現在語幹の用例を網羅した資料の完成を急ぎ、速やかにi,uで重複する現在語幹の用例調査にとりかかる。
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Causes of Carryover |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))によるドイツ滞在研究の準備に時間がかかったこと、また3月に帰国後14日間自主待機をしたことなどの理由により、予定していた物品の発注ができなかった。
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