2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Old Indo-Aryan reduplicated present
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18K00054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾園 絢一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (90613662)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重複する現在語幹 / 古インドアーリヤ語 / ヴェーダ |
Outline of Annual Research Achievements |
無幹母音型重複現在語幹の中、aで重複する現在語幹の用例を調査を行い、機能について部分的考察を進めた。特に用例が最も多いdadaa-「与える」およびdadhaa-「置き定める」についてリグヴェーダに見られる用例を中心に検討し、アオリスト語幹と比較しながら、現在語幹の用法を考察した。 アオリスト語幹と現在語幹の意味の差は、アスペクトの対立に由来するものと考えられているが、特に言及法においては、K.Hoffmannが指摘するように、アスペクトに基づく意味の差異が明瞭に見て取れる例が見られることを確認した。イランのアヴェスタ語およびギリシア語に残る言及法語形と比較しながら、言及法の用法について考察を進め、その内容を学会にて発表し、論文が掲載された。 またdaa「与える」の活用を補完(suppletion)するpra-yam 「差し出す」についてヴェーダ語の用例を集め、用法上の違いを検討した。daaとpra-yamの用法の区別についてはまだ解明されていないが、リグヴェーダ第10巻以降に頻繁に現れる、現在語幹pra-yaccha- に焦点を当て、アタルヴァヴェーダ、ヤジュルヴェーダの用例を中心に分析を行い、daaとpra-yamにおける意味の差異、パラダイム内における交替の有無、生産性の通時的変化などの観点から両者の補完関係を検討した。目下、i又はuで重複する現在語幹の調査を進めている。重複現在語幹の調査結果および調査の過程で生じた問題(補充法suppletionの問題など)を学会又は研究会にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の変更とコロナ禍における移動制限等により、研究環境の整備(書籍、機器の移転など)が遅れたため、夏から研究活動を本格的に開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
i, u で重複する現在語幹の調査を進め、重複現在語幹の用例分析を完成させる。国際共同加速基金の研究プロジェクトと連動して機能の考察を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた出張のほとんどが不可能になり旅費が支出されなかったこと、研究補助作業に対する謝金などが支出されなかったことにより未使用額が生じた。
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