2018 Fiscal Year Research-status Report
中世インドにおける帰依思想の民衆化に関する思想史的研究
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18K00058
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
井田 克征 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60595437)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 印度哲学 / 宗教学 / バクティ / 帰依思想 / リーラーチャリトラ / マハーヌバーヴ派 / マラーティー語 / ヒンドゥー教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在のマハーラーシュトラ州北部において13世紀に成立したマハーヌバーヴ派の根本聖典『リーラーチャリトラ』を取り扱い、中世後期に生じた帰依(バクティ)思想の民衆化という問題を考えるものである。 研究初年度にあたる本年度は、まず既に入手済みの刊本の目次およびイントロダクションにもとづいて、各章のおおまかな内容と粗筋を把握して、今後重点的に解読に取り組む箇所をいくつか決定した。「エーカーンカ」「プールヴァ・アルダ」「ウッタラ・アルダ」という三部構成のこの長大なテキストの中で、特に「ウッタラ・アルダ」において、後の教理書等に引用され、この派の帰依思想の展開において重要な位置を占めることになった箇所をいくつか確認し、分析を開始した。 2019年1月にはマハーラーシュトラ州のいくつかのマハーヌバーヴ僧院などにおいて写本調査を行った。まだカタログ化も為されておらず、多くの写本が個人や教団所蔵である現状において、網羅的な写本収集は現実的ではないため、可能な限り重要と思われる写本数点の所在を確認し、部分的にコピーを入手した。インド滞在中には現地の研究者との討議を行い、資料の読みや帰依思想の理解をより正確なものとした。帰国後は、現地にて収集した写本や二次資料を参照しつつ、テキストの校訂・解読を進めた。 以上の研究成果の一端は、井田克征「聖地と物語―マハーヌバーヴ教団の事例から」『聖地のポリティクス―ユーラシア地域大国の比較から』(杉本良夫・松尾瑞穂編)風響社,2019年3月,pp.87-112として刊行されるとともに、いくつかの学会報告などでも公にされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
刊本を中心とする解読作業自体は順調に進んでいる。現地での写本収集は、多くの写本が個人ないし教団所蔵であるために必ずしも思ったようには進んでいないが、刊本の読みを訂正するために必要な最低限の成果はあげられている。一方で二次資料に関しては、特に現代マラーティーおよびヒンディー語資料を中心に、かなり順調に収集を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も『リーラーチャリトラ』重要箇所の解読と、テキスト校訂が作業の中心となることは変わらない。二年目にはインドでの写本調査に加えて、ブリティッシュ・ライブラリー所蔵写本の調査も検討している。 二年目には、このテキストの説く帰依思想の実態をある程度明らかにした上で、それを後の『スートラ・パート』や『スムリティ・スタル』などのテキストと付き合わせて、帰依思想の発展・変容の経緯を考えていくつもりである。
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Causes of Carryover |
研究初年度に計画していたインド・マハーラーシュトラ州における写本調査は、他の研究資金による現地調査の際に同時に行うことができたため、本科研費から支出する必要が無かった。この分の資金は、次年度のイギリスにおける資料調査に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)