2020 Fiscal Year Research-status Report
中世インドにおける帰依思想の民衆化に関する思想史的研究
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18K00058
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
井田 克征 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (60595437)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 印度哲学 / 宗教学 / バクティ / リーラーチャリトラ / マハーヌバーヴ派 / マラーティー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドのマハーラーシュトラ州北部ゴーダーワリー川流域においてチャクラダル・スワーミ―と呼ばれる人物により13世紀に創始され,民衆的な支持を得て大きく発展した,バクティを中核とする信仰集団マハーヌバーヴ派の根本聖典『リーラーチャリトラ』を取り扱い,この地域において生じた帰依(バクティ)の宗教の民衆化という問題系を考えるものである。 一連の研究の三年目にあたる本年度は、「エーカーンカ」「プールヴァ・アルダ」「ウッタラ・アルダ」という三部構成からなるこのテキストの中でも思想的に重要な箇所が多く含まれる「ウッタラ・アルダ」を中心に,これまで扱ってきた箇所の続きを取り扱った。具体的な作業としては,まず第一に中世マラーティー語で書かれた当該テキストの翻訳作業と,そのテキスト自体の読みが疑わしい箇所に対する再校訂作業とからなる文献学的研究である。そして第二にはこの文献学的研究の成果を基盤として,テキストの中に示された救済論や民衆への教化の方法などを解明する,思想史的研究である。 今年度は新型コロナウイルス感染症の大流行により海外渡航が困難となった。本研究で計画していた現地調査も実行することができず,本来であれば本年度に回収する予定だった写本資料が入手できなかった点は,研究の遂行上大きな問題となっている。この状況は2021年度においても継続する可能性が高いため,本来の計画において重視されていた文献学的研究に関しては,すでに回収済みの写本のみで進めていくものとして,規模を縮小した。一方で刊本を対象とする解読作業に関しては,その取扱い範囲を広げるなどした。 『リーラーチャリトラ』の思想を,同派の初期聖典群の中に位置づける作業も,昨年度扱わなかった14世紀後半の資料を扱うなど,取扱範囲を広げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延によりインドにおける現地調査が執行できなかった。このために昨年度までに確認し,現地にて複写を進めていた写本資料などの入手が困難となったことは,本研究の進行において大きな障害となった。また現地において専門家とテキストの細かな読みについて討議することもできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの蔓延は2021年度においても継続することが予想される。本来の計画の中で予定されていた現地調査,資料調査等に関しては,原則的に実行不可能と判断し,取り扱う写本資料は現在手元にあるもののみで継続する。 本来の研究計画の中で大きな比重が与えられていた写本校訂作業の縮小と,その代わりに本来の研究計画の中では分析対象とされていなかった「プールヴァアルダ」内のいくつかの箇所なども,刊本中心に取り扱っていくこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により,イギリス・ブリティッシュライブラリーにおける資料調査と,インド・マハーラーシュトラ州における現地調査が実行できなかった。そして国内の研究会,学会等もほとんどがオンライン開催になったため,国内出張も実施されなかった。 国内出張等は,次年度以降に可能であれば実施する。
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Research Products
(1 results)