2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Yogic Perception in Later Buddhist Epistemology
Project/Area Number |
18K00059
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
護山 真也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60467199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダルマキールティ / プラジュニャーカラグプタ / ジュニャーナシュリーミトラ / ヤマーリ / ヨーガ行者の直観 / プラマーナ / 宗教的経験 / 全知者 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダルマキールティ以降の知覚論において,ヨーガ行者の直観という宗教的経験がどのように位置づけられるのか,という問題設定にもとづく今年度の研究は,昨年度に引き続き,プラジュニャーカラグプタの『認識論評釈荘厳』の関連個所のテキスト校訂と翻訳研究を基礎として,以下の成果をおさめた。 (1) ヤマーリの複註『認識論評釈荘厳註・極円浄論』の冒頭部で展開されるブッダの全知者性と宗教的権威をめぐる議論を分析し,世俗の認識手段である知覚や推理とブッダという勝義の認識手段との関係をめぐるヤマーリの考察からは,(i) 正しい認識手段としての聖典の役割の復権,(ii) 複数のブッダの存在を前提とした全知者論,(iii) 『認識論評釈』第二章の構成の〈循環問題〉とその解決,に特色があることを指摘した。 (2) テキスト解釈上の問題があるPV III 286に対するプラジュニャーカラグプタの解釈の意義については昨年度の研究が明らかにしたが,今年度は,その成果をジュニャーナシュリーミトラの『ヨーガ行者の確定論』の対応箇所と比較検討した。それにより,ヨーガ行者の直観の〈整合性/欺きのなさ〉を「正しい認識手段による検証」とむすびつけて理解しようとするプラジュニャーカラグプタに対して,ジュニャーナシュリーミトラは,全知者の認識対象を基体となる個物とその属性に分けて考え,前者には検証可能性の解釈はあてはまらないと批判していることを明らかにした。プラジュニャーカラグプタ以降のヨーガ行者の直観の〈整合性/欺きのなさ〉解釈の思想史における重要な一コマであると考える。 (3)無常性などに対するヨーガ行者の直観の対象がなぜ独自相とされるのか,という昨年度から継続する問題に関して,ダルマキールティのPVSVにおける独自相と普遍および概念知の関係をめぐる議論の解読を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラジュニャーカラグプタの『認識論表訳荘厳』関連個所のテキスト校訂と和訳,およびジュニャーナシュリーミトラの『ヨーガ行者の確定論』の和訳研究の進捗は,計画通りである。また,今年度,ライプチヒ大学での国際ヤマーリワークショップや,ヤゲェウオ大学,ウィーン大学での研究発表が実施できたことで,海外の研究者に本研究の成果を公表し,一定の反応が得られたことも,研究の推進力となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響により,2020年度に予定されていた国際学会等がのきなみ延期されており,研究費の執行計画を変更する必要がある。また,2020年10-12月にライプチヒ大学を訪問し,ヤマーリの写本研究の最新の成果を受容する予定であったが,情勢の推移如何では,中止や延期もやむを得ないかもしれない。ただし,以上は研究費の執行年度の問題であり,延期される学会発表や共同研究に向けた準備を遺漏なくすすめることで,研究全体の推進には影響はないものと思われる。
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