2018 Fiscal Year Research-status Report
新ニヤーヤ学派の言語理論におけるラグナータの革新性の研究
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18K00060
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 壽弘 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (00201260)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新ニヤーヤ学派 / 言語哲学 / 定動詞語尾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要対象テキストであるラグナータ著『定動詞語尾論』は、11の部分に分割でき、第6部分までは本研究を開始する前に扱い終えていた。本研究は、第7部分「受動文から得られる言語認識についての古ニヤ-ヤ説」から最後の第11部分「プラバーカラ派説とそれへの反論」までのサンスクリットテキストを校訂し、英語に翻訳して解説することを目指している。本年度は、第7部分のテキスト校訂と英語訳および解説を完了した。テキスト校訂では6刊本を参照し、解説の作成に当たって、註釈書にはラーマバドラ著『定動詞語尾釈論』とマトゥラーナータ著『定動詞語尾論解明』との2本を用いた。この部分は受動文における定動詞語尾の意味を扱っている。 この部分で紹介される「古ニヤーヤ説」は、ラグナータに先行する新ニヤーヤ学派のガンゲーシャ(14世紀)の主張に極めて近いことを突き止めた。ラグナータが使用する「古ニヤ-ヤ」という語は必ずしも新ニヤーヤ学派以前のニヤーヤを指すとは限らないことを突き止めた。つまり、ラグナータにとって「古」「新」という表現は相対的なものである。その結果、現代の研究者が了解している「11~12世紀以前のニヤーヤ学派は『古ニヤーヤ』で、それ以降は『新ニヤーヤ』」という立場で用いられる「古ニヤーヤ」「新ニヤーヤ」は、研究者が用いる操作概念と理解すべきであることを明らかにした。 新ニヤーヤ学派内部における違いは、先行研究が十分でないだけに、これまでほとんど注目されることはなかった。第7部分の分析は、それ以降の部分に現れると予想されるガンゲーシャとラグナータの違いを先取りしており、新ニヤーヤ学派の発展(変容)形態の解明に大きな貢献をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラグナータ著『定動詞語尾論』の第7部分のテキスト校訂・英語訳・解説を予定通り完了した。また、新ニヤーヤ学派を確立したガンゲーシャ(14世紀)とラグナータ(16世紀前半)の説の違いを浮かび上がらせた論攷を執筆し、海外の記念論集に招待論文として寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラグナータ著『定動詞語尾論』の第8部分以下最後までの校訂テキスト・英語訳・解説を完了させる。その際の方法は、第7部分を扱った方法(「研究実績の概要」に記述)と同じである。第8部分以下には、ミーマーンサー学派の中の2大支派であるバッタ派とプラバーカラ派との説が批判される。また、仏教論理学派が主張する説も言及される。これらの主張の起源の探求あるいは彼らのテキストにおける後付けを試みる。
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Causes of Carryover |
カナダのヴァンクーヴァーで開かれた「世界サンスクリット会議」への参加旅費および国内旅費を予想外に節約することができた。その分を2018年度研究成果論文を国内・海外の研究者および研究機関への郵送費に充当したが、使用額が若干残った。次年度(2019年度)には、意見交換あるいは研究発表を目的としてサヴィトリバイ・プレ・プネー大学(インド、プネー市)を訪問するための旅費、複数の英語論文の校閲謝金、および研究補助のための謝金の支出を予定しており、次年度支給額は残らないと予想している。
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Research Products
(1 results)