2018 Fiscal Year Research-status Report
漢訳仏典の受容後に生じた漢語ベースの思考法の解明:中国仏教の漢字術語の重層性
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18K00061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢訳仏典 / 仏教漢語 / 語義解釈 / 仏教の中国化 / 漢語的思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度として本年度は全四年間の基礎となる基盤形成に意を注いだ。資料整理に必要な設備備品として,当該研究における原典資料入力作業に必要なパソコンと,周辺機材を購入した。今年取り上げる仏教語の整理に必要な図書も購入した。 具体的な入力作業としては,当初の予定通り,今年は二字より成る仏教漢字術語のうち,「如来」「世諦」「真諦」「衆生」「有情」「五陰」「五蘊」「煩悩」など二十語を取り上げ,それらの語義解釈を示す一次資料を漢語原典より収集し,それぞれ別個のファイルを作成した。また,今年は直接的対象としない仏教語に関しても,今年の対象語と関連する語については準備的ファイルを作成し始めた。 さらに上記の仏教漢語のうち,時代の異なる同義語である「衆生」と「有情」および,「五陰」と「五蘊」の二組,計四語については,口頭研究報告1回と原典購読集会2回を行った。まず11月にオックスフォード大学を訪れ,ベリオール校のステファノ・ザケッティ教授および彼の大学院学生十人程と共に「衆生」と「有情」の用例,意味の相違,歴史的変遷に関する原典行動を実施した。資料は船山が作成したものを用いた。次に12月には東京で開催されたシンポジウム「近未来の東方学」において,「訳語の適性―「衆生」から「有情」へ、そして再び「衆生」へ―」と題する報告を行った。これ以外にもさらに本研究課題に基づく口頭発表を二回,九月と三月に行った。 年度末の3月中旬にはザケッティ教授を京都に七日間招待し,「五陰」の早期の用例に関する研究論文を出版している同教授の意見を参考にしながら,京都大学の学生を交えて,「五陰」と「五蘊」のの用例,意味の相違,歴史的変遷に関して船山が作成した原典資料を会読し,英訳を施した。以上概ね好調な研究作業を実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究費の申請書に書いた大綱に沿いながら,申請書に明記した初年度の研究計画をほぼそのまま実施することができた。それと共に,初年度に行った作業と研究報告を通じて今後の残る三年に何をすべきかについても,具体的な見通しを立てることができた。 また,上記「研究実績の概要」に記した通り,ザケッティ教授およびオックスフォード大学と京都大学に所属する大学院生たちとテキストを読み,関連する様々な意見交換をする間に,私自身の副産物として,漢訳仏典における音写語(いわゆる「音訳」)の価値について,既にかなり注目してきたつもりであったが,これまでの成果を超える新たな知見を具体的に得ることができた。これも大きな収穫であった。 以上を総合して,研究は現在までおおむね順調に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である今年の作業状況にかんがみて,今後の3年間についても申請書に記した予定通りに研究を推進するつもりである。実際,それが可能であるという感触を,本年度の研究を通じて得ることができた。 具体的な作業としては,本科研は分担者を有さない研究代表者一人による研究として更に進めて行く。国内の研究者と連携するのではなく,同じ問題意識を共有する三人の海外研究者と強い連携を保ちながら国際レベルでの研究を推進すべく,旅費を用いて私が外国出張するか,あるいは京都に招待するかして腰を据えた原典購読を継続する予定である。 申請書に記した通り,二年目の来年度は「聖」「身」「律」「仁」「忍」「真」「王」など,漢字一字の重要な仏教語およそ十五語を選定し,原文の蒐集と現代語訳を作る予定である。三年目は,四文字以上の漢語と音写語を中心として,「無生法忍」「言語道断」「心行処滅」等と「盧舍那仏」「毘盧遮那仏」等の音写語の約十五語を取り上げ,それらの術語解釈を示す一次資料を作成する。最終年度の四年目は,三年間に蒐集した約五十語の仏教漢語を総合的に解析し,整理し,思想史的特徴を抽出する。実績を公開するため,英語による研究集会を京都で企画する。 以上の各年に対象とする仏教用語に関し,最新の研究成果を把握しながら研究を推進するために必要な関連図書(インド語と漢語の仏教語の語義解釈に関する研究書・論文)を蒐集した上で,従来の研究水準を凌駕する研究を本研究課題において実現するよう心懸ける。
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Causes of Carryover |
年度末直前の時期に,それまで使用していたキーボードが突然破損した。そこで作業を滞りなく継続するため,コンピュータ周辺機器消耗品としてキーボードの特定機種を購入しようと注文したが,年度末であったことが理由となり,予定の納期までに納品するのは困難であることが後日判明した。私は入力ミスを防ぐため,日頃からキーボードの入力には気を遣っているため,他に代用できる機種をすぐに選定するのは困難であった。その結果として予想外の残金が生じることとなった。
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Research Products
(7 results)