2018 Fiscal Year Research-status Report
The Mathematical Thought in the School of Image-Number I-Ching related to the Study of Shushu
Project/Area Number |
18K00062
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 象数易 / 京氏易 / 科学思想史 / 術数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
漢代象数易の形成過程とその思想的背景を明らかにするために、先秦から漢に至る自然哲学的な言説を包括的に考察した。主要な考察内容をまとめると、以下の5項目である。(1)儒家の経典としての易が台頭し、老子の自然哲学と交錯していく具体的様相、(2)易の数理的基盤となる陰陽五行説、天人感応説、物類相感説の形成と展開、(3)漢代思想革命における自然探究の学問の役割と術数学の形成、(4)京房によって唱えられた災異説の数理、(5)前漢末の終末論と緯書の暦術 以上の考察によって得られた成果に基づいて、2018年11月に『術数学の思考』を刊行し、麥文彪と一緒に論文集『天と地の科学』を編集した。また、五行説の中心的論題である五星観の形成をめぐって、「先秦の惑星観」「先秦星辰考」の2つの論文にまとめて発表した。古四分暦から太初暦、三統暦、四分暦へと至る五星運動論の精密化と易理による理論化については、論文にまとめて今後に発表する予定である。 国際共同研究の体制作りを目的として目的として、以下の2つの国際集会を企画した。(1)2018年12月に北京大学外国語学院教授の陳明氏を招聘し、インド、中国、日本の知識交流をめぐる特別講演会を催し、易を中核とする科学思想の東アジア的展開を討議し、来年度に北京にて共催シンポジウムを行うための協議を行った。(2)2018年6月に中国、韓国と日本の若手研究者を集めた日中医学史セミナー2018を開催し、科学と思想、宗教の接触領域における文献研究やその応用についての講習会を開催し、国際交流を促進し、人材育成を図った。その他、医学史、鍼灸学の研究集会に参加し、伝統医療文化の形成に易や老子の自然哲学がどのような作用を発揮したのかについて講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京氏易や易緯に関しては、これまでの研究の蓄積があり、基礎資料が整っているので、円滑に研究を進めることができた。新出土資料の検討についても、山梨県立大学准教授の名和敏光氏、早稲田大学博士後期課程の小倉聖氏との読解ワークショップによって有益な成果が得られた。象数易関連の研究データベースを作成する作業については、集めた資料の分量が多く、整理と分類に手間取り、テキスト入力やタグづけの作業が予定よりも遅れて4月にずれこんだが、研究を推進するうえでさしたる支障はなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
象数易の中世から近世への展開を探る。主要な研究テーマは、次の4点である。(1)易緯の暦運説の中世、近世的展開、(2)先天易の脱構築と京氏易の世俗化、(3)医術と暦術の結合:運気論の数理構造 (1)は、『易緯乾鑿度』『易緯稽覧図』に展開された暦運説の数理構造を明らかにしたうえで、道教文献に見られる終末論や『太乙金鏡式経』の暦術を考察し、暦運説が唐宋社会に与えた影響、さらには改元をめぐる日本的展開を検討する。(2)は、邵雍『皇極経世書』によって唱えられた先天易の数理思想や河図洛書、太極図、先天図による易図説が易学や自然科学にどのような作用を発揮したのかを多角的に考察する。その一方で、象数易の首座を奪われた京氏易の理論が断易などの近世の占術理論に応用されていく流れを把握するために、『卜筮元亀』などの易占書の読解を試みる。(3)は、先天易とともに台頭する運気論について、易理との数理的結合を解析した後に、宋元明の医学理論における史的展開を追跡する。 思想、宗教と医薬の境界領域における国際共同研究の立ち上げを図ることを目的として、2019年8月に北京大学において北京大学東方文学研究センター、ブリティシュコロンビア大学仏教フォーラムとの共催で国際学術討論会を開催し(中国側代表:陳明北京大学教授、日本側代表:武田時昌)、2019年12月に京都大学人文科学研究所において、中国人学者を招聘して漢代思想と緯書をテーマとする国際ワークショップを開催する予定である。
|
Causes of Carryover |
計画していたデータベース作成のデータが予想以上に多く、整理が年明けになってしまったうえに、雇用を予定していた大学院留学生にアクシデントがあり、2月、3月に一ヶ月半の帰国を余儀なくされたために、作業が4月にずれ込んだ。本年度は、繰り越した分を含めて遅滞のないように、データベース作成に取り組みたいと考えている。
|