2019 Fiscal Year Research-status Report
The Mathematical Thought in the School of Image-Number I-Ching related to the Study of Shushu
Project/Area Number |
18K00062
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 名誉教授 (50179644)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 象数易 / 京氏易 / 暦運説 / 先天易 / 緯書 / 術数学 / 漢代思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世から近世にかけての象数易の史的展開を鳥瞰し、京氏易、易緯や出土簡帛資料に遡及的な考察を試み、その数理構造の特色を明確にし、その形成と展開を探った。主要な考察内容は、以下の4項目である。(1)易緯の暦運説の理論構造と中世、近世的展開、(2)『卜筮元亀』を中心とする断易の理論と京氏易の影響、(3)近世医学思想と象数易の理論的考察及び韓国、日本への展開、(4)年中行事の遡及的考察と易象数による理論化。 以上の研究成果に基づいて、年中行事の術数学的考察に関する論文を発表し、中国古代の暦運説の形成と展開をめぐる論考を執筆した(現在、投稿中)。また、中国の成都中医薬大学、北京中医薬大学、韓国の東医宝鑑村で行われた国際研究集会に参加し、医薬の理論的考察と日本的展開についての講演を行い、中医学、韓医学の研究者との交流を深めた。日本においては、森ノ宮医療大学教授の長野仁氏とともに近世医学史の再構築を試みる共同研究プロジェクトを推進し、NHKや富山鍼灸学会との共催イベントを主催した。そそて、鍼灸医術の遡及的考察による科学思想史的アプローチによる伝統医療文化研究や現代鍼灸の理論構築の必要性を提言した。 思想史、科学史の方面において、国際共同研究の立ち上げを図ることを目的として、8月24-25日に北京大学において、北京大学東方文学研究センター、北京大学人文学部、ブリティシュコロンビア大学仏教フォーラムとの共催で大規模な国際シンポジウムを主催し(総合テーマ「従中古到近代写本与跨文化交流」)、12月14-15日に近畿大学非常勤講師の伊藤裕水氏とともに「緯書と経書学」国際シンポジウムを開催した。また、2019年9月26日には、全北大学校科学文明学研究所において、科学史研究者とミーティングを行った。それぞれの集会において、これまでの研究成果を踏まえた研究発表を行い、国際的な研究連携を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京氏易、緯書、暦運説や医易に関する研究は、大幅に進展し、順調であった。『五行大義』などの中世術数書に関しては、山梨県立大学准教授の名和敏光氏、早稲田大学博士後期課程の小倉聖氏との読解ワークショップによって、これまでの研究成果を再検討し、遡及的な考察を試みることで、有益な研究成果が得られた。 ところが、2020年に入って、新型コロナ・パンデミックの騒動があり、3月に予定していた講演会(演題「易学象数論の世界線―中国の科学と占術」)が中止となったほか、中国、台湾から研究者を招いた国際ワークショップが開催できなかった。また、2月、3月には象数易データベース作成のためのバイト作業が十分にできず、4月以降も事態がさらに悪化したために、予定した計画が大幅に遅れてしまった。それと連動して、近世以降の先天易に関する研究が遅れ気味になっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前2年度の研究成果を総合して、京氏易と先天易を中心とする象数易の理論構造を明らかにし、科学思想史的見地から特色を探る。象数易の技法では、広く知られているわりに最も難解な納音や世軌法の数理構造の解明に取り組む。考察対象は、易緯に加えて断易関連資料および日本に残存する『周易命期経』やその注釈書を取り上げる予定である。また、先天易が唱えた音律や天文暦数との天文律暦学と易数との結合を構造的に把握し、宋代以降に易図説を用いて数理思想を展開した図書先天の学について具体的様相を素描し、それが果たした役割を明確にする。さらに、近世医学思想に与えた作用も検討する。 以上の考察を踏まえて、象数易と術数学、道教文化、医療文化との関連性を包括的な立場から考察し、中国的パラダイムの形成において象数易が果たした役割を総括する。 考察に当たっては、考察対象に取り上げる諸文献を横断的に検索できる中国数理思想関連データベースを構築する。本年度は、『五行大義』や『易学象数論』に論及されている諸文献を整理する予定である。 象数易の理論構造や思想的背景の分析においては、昨年度に引き続き中国思想や道教を中心とする専門的な研究者を集めて読解ワークショップを開催し、多角的な考察を試みる。また、象数易または科学史、科学思想史の分野で関連する研究者を国内外から招聘し、締めくくりとしての国際ワークショップを開催する。ただし、4月、5月に企画した国際研究集会の開催が延期になり、10月に予定している日韓合同ワークショップも実施できるかどうかわからない。新型コロナ・パンデミックが終息し、研究集会に支障がなくなるならば、今年度中の開催を目指したい。研究会、読書会も同様であるが、規模を縮小したり、Web回線を活用したりするなど、様々な工夫を行うことによって、これまで構築した共同研究ネットワークのさらなる充実を図りたい。
|
Remarks |
退職により、人文科学研究所のWebページ(http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~takeda/)が使えなくなったので、現在、新たなHPの開設を準備中である。
|