2020 Fiscal Year Research-status Report
The Mathematical Thought in the School of Image-Number I-Ching related to the Study of Shushu
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18K00062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 名誉教授 (50179644)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 象数易 / 京氏易 / 先天易 / 緯書 / 術数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
象数易の二大学派である京氏易と先天易を中心として、象数易の理論構造の特色を多角的に考察した。 京氏易については、漢代の暦運説との関連性を、易緯、春秋緯の暦術の数理構造を明確にし、遡及的に考察することによって、暦運説の形成過程を明らかにした。そして、前漢の経学において、京氏易を代表とする象数易が台頭し、易数と暦数を結合させていく具体的様相を追究し、漢代思想革命に果たした役割を考察した。さらに、中世以降における暦運説、終末論の展開を手がかりにして、京氏易を理論的な中核に据えた中国占術の構造的把握を試みた。また、『卜筮元亀』『断易天機』などの断易書や『五行大義』、陰陽道関連資料を分析して、京氏易が近世になっても世俗の易占術の理論的基盤を提供していたことを明らかにした。 先天易については、思想界に与えた影響を、明末清初の黄宗羲『易学象数論』、胡渭『易図明弁』などによる図説批判を手がかりに考察し、その問題圏を明らかにした。そして、その象数易理論が朱子学にどのような数理的作用を発揮したのかを探った。また、朱子学を受容した江戸の儒者が著した易学書の内容を分析した。とりわけ、易学を医学と結合させた医易の数理的考察を行った。 研究成果については、昨年度に作成した「易緯の暦運説とその展開」を増補して、歴史民族学博物館の研究報告論文集に投稿した(未完)。また、医易の新出資料として、香川修徳(修庵)の『易弁』(長野仁氏所蔵本)を翻刻し、解題、訳注を施してPDF化した(『近世医家新出史料集』第二集(『南洋先生門人帳』)に附録し、増補版として刊行の予定)。また、年度末に臨川書店より『術数学の射程』『天と地の科学』和文篇の再販を実現させ、それを契機として日中韓三国の執筆者を中心に、国内外の術数学、科学史研究者との連携を深め、象数易データベースを共有し、その修訂、増補を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナのパンデミックが依然として猛威を振るい、企画した国際集会はすべて延期になり、主要文献の読解ワークショップについてもZOOMを活用したWeb会議をいくつか開催するに止まった。また、主要文献の国内調査もまったく行えず、象数易データベースを完全なものにすることができなかった。 そのために、これまでに蒐集した文献資料の検討はしっかり行ったものの、未見の資料がいくつかあり、総合的な考察に不完全さが残った。また、国際集会に加えて、易学学会等での講演も再度延期となったために、研究成果の発表を行うことで、ブラッシュアップする機会が得られなかった。 そのために、全体的な総括を行うには至らず、研究期間を一年延長することを余儀なくされた。研究自体は新しい知見もあるので、送れているわけではないが、最終的な締めくくりができななったことは、コロナ禍に見舞われたせいではあるが、大いに反省している。
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Strategy for Future Research Activity |
前三年度の研究成果を総合して、象数易理論を構造的に把握し、科学思想史的見地から特色を探る。京氏易については、断易を中心とする近世的展開、先天易については、近世易図説の理論的特色について考察を深め、象数易を中核理論として形成された術数学の包括的な研究へと発展させていきたい。 主要な研究対象としては、以下の三点である。(1)未定稿のままになっている納音や納音や世軌法の数理構造の論考を、資料調査を続行してまとめあげる。(2)明末清初の先天易批判を象数易の史的展開において位置づけ、宋明理学から清朝考証学への転換をめぐって思想史的作用を探る。(3)近世の易学と医学との連関を、医易に関する著作の考察によって多角的に検討する。 中央研究院歴史語言研究所教授の李建民氏等を招聘した国際研究集会を企画しているが、コロナ禍が終息する気配がないので、実現するかどうかはわからない。読書ワークショップも同様であるが、Web回線を活用することで、有意義な研究交流を行い、これまで構築した共同研究ネットワークのさらなる充実を図りたい。
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Causes of Carryover |
中国、台湾の研究者を招聘した国際研究集会を企画していたが、コロナ禍のために2度の延期を余儀なくされ、結果的に年度末までに実施することができなかったために、招聘旅費等の経費の残額が生じた。そこで、2021年5月末に台湾の歴史語言研究所教授の李建民氏の招聘を企画して航空チケットの手配を済ませていたものの、延期せざるを得ない状況にあるので、開催を見送っているが、コロナ禍が終息するならば、最終の成果報告集会を速やかに開催したいと考えている。
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