2019 Fiscal Year Research-status Report
上古日本天台における一乗思想の基礎研究-叡山文庫蔵『法華三宗相対抄』を中心に-
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18K00070
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
道元 徹心 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60368024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 天台 / 一乗思想 / 法華三宗相対抄 / 千観 / 一三権実論争 / 最澄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題である「上古日本天台における一乗思想の基礎研究-叡山文庫蔵『法華三宗相対抄』を中心にー」は、最澄(767-822)と徳一(-783-)との一三権実論争に始まり源信(942-1017)撰『一乗要決』に至る思想展開が中心となる。最澄以降、源信までの思想展開については不明な点が多かったが、部分的ながら今年度の研究を通じて以下のことが明らかとなった。従来の天台教学史では良源(912-985)と源信の両者に焦点を当てた教学展開しか顧みられない状況にあった。今回、一乗思想の系譜は良源よりもむしろ千観から源信へと把捉することが大切であるとの新たな知見を得ることができた。前年度以降、具体的に千観(918-984)撰『法華三宗相対抄』の一部を翻刻し思想特徴を検討してきた。本書は3307丁もの膨大な文献である。その中には別本と称される『三宗相対抄』の再治本『法華三宗要録』が含まれる。特に別本の方便品に千観自身の思想がより表れていることが分かってきた。 『法華三宗相対抄』は天台・法相・三論の各宗の典籍から引用を重ねており、法相の『法華玄賛要集』を引用しており、従来の逸文がその中に多く含まれている。 前年度から『三宗相対抄』の思想を研究し肝要なる箇所計55丁の翻刻作業を行った。その結果、本研究課題の要点である最澄以降の一三権実論争の展開について、その一部を明かすことができた。千観の最澄著述に対する言説が検出され、最澄から千観そして源信へと展開する一三権実論の文脈を論文としてごく最近に公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果としての論文がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、今後の課題として、逸文の復元がある。『法華三宗相対抄』には栖復撰『法華玄賛要集』が多数引用されており、引用文には従来の逸文とされてきた文が多く含まれている。現行の流布本(底本は東大寺写本)に比べ、『法華三宗相対抄』所引の『法華玄賛要集』の方が資料的価値において遥かに優れている点が検証できた。今後も『法華三宗相対抄』の翻刻研究を進め、巻22・巻23・巻30・巻32を翻刻することにより逸文の部分的復元を目指したい。
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Research Products
(1 results)