2021 Fiscal Year Research-status Report
上古日本天台における一乗思想の基礎研究-叡山文庫蔵『法華三宗相対抄』を中心に-
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18K00070
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
道元 徹心 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (60368024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 栖復 / 千観 / 法華経玄賛要集 / 法華玄賛 / 法華三宗相対抄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「上古日本天台における一乗思想の基礎研究 -叡山文庫蔵『法華三宗相対抄』を中心に-」は、日本天台における一乗と三乗の仏性問題の解明を目的とする。叡山文庫の千観撰『法華三宗相対抄』は平安時代から鎌倉時代にかけて書写された紙数3307丁からなる文献である。この古写本は千観(918-984)が天台の一乗思想と法相の三乗思想である仏性問題に関して、天台・三論・法相の三宗の要文を引用して構成した文献で、本研究ではその思想的特徴を浮き彫りにすべく、文献の一部(別本の巻1の12丁および巻4から巻5にかけての44丁の計56丁)を翻刻発表した。 最澄以降の一乗思想の系譜においては、良源と同時代の人物に千観がいる。良源(912-985)から源信(942-1017)へと思想系譜をたどる従来説に対し、良源以上に千観の存在が大きく位置するとの論を提示した。その根拠として、最澄の『法華秀句』の内容に千観が言及して自説を展開していることを新たに指摘した。 また、日本天台においては一乗思想と戒律思想が深く関わっている。天台では特に円頓戒と称し、それに関する新出文献を提示、日本天台における戒律思想の一側面も明らかにすることができた。 叡山文庫所蔵の『法華三宗相対抄』には栖復撰『法華玄賛要集』が多数引用され、その引用文には逸文が多く含まれている。本年度はその逸文とされてきた『法華経玄賛要集』巻22・巻30・巻31(一部分)・巻32の原文を推定し翻刻によって部分復元をおこなった。翻刻を通じて千観の『法華経玄賛要集』観や『法華玄賛』観を解明する緒を提示できたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、おおむね計画にそった進捗状況にあり、現在まで計8点の研究業績がある。
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Strategy for Future Research Activity |
叡山文庫所蔵『法華三宗相対抄』をもとに千観が一乗三乗の仏性問題について、どのように捉えていたかを解明していくこととしたい。 高野山には国宝『文館詞林』があるが、その紙背文書として『法華三宗相対抄』があることが確認された。そのことは未だほとんど世間に知られていない。高野山の関係者による特別な配慮により、その貴重資料の提供を受けることができ、今後は海外の研究者を含めた『文館詞林』/『法華三宗相対抄』の分野横断型の共同研究を進める予定である。あわせて叡山文庫本『法華三宗相対抄』との比較もおこなっていきたい。
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Research Products
(1 results)