2018 Fiscal Year Research-status Report
アビダルマ以後における仏教的存在論と恒常的存在の存在論証との論争の系統的研究
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18K00071
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
狩野 恭 神戸女子大学, 文学部, 教授 (70204592)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アートマン / プルシャ / プドガラ |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度に予定していた3項目、すなわち、第一の『アビダルマコーシャ・バーシュヤ』(AKBh)の分析については、特にその第9章破我品を中心に分析し、その結果と概要を『オーストリアアカデミー・アジア部門元所長・故クラッサー博士追悼記念論集』(仮称)(オーストリアアカデミーから出版予定)に論文としてまとめ、投稿した。この論文では、特に『シャスティタントラ』との関係で、サーンキャ思想やヴァイシェーシカ思想につながる問題について分析し、アートマン、あるいはプルシャといった主体の存在の論証が2つの方向からなされていることをAKBh第9章の記述の分析を通して指摘した。第二の『タットヴァ・サングラハ』『同・パンジカー』「イーシュヴァラ・パリークシャー」のテキスト作成については、サンスクリットテキスト作成をほぼ終了し、チベット語テキストとの対照段階にはいっている。ただし、写本との関係、チベット語訳と写本、刊本との関係など、多くの課題が見えてきている。これらの点については、他の章と同様、『タットヴァ・サングラハ』校訂の基本的問題であるので、他の章の研究者と協力の上で、検討することとする。第三の、『ニヤーヤ・マンジャリー』写本については、三月にインドを訪問し、これまで入手していない写本を調査し、一部のコピーを入手した。これにより、『ニヤーヤ・マンジャリー』主宰神論部分については、一部を除いて現在知られている写本の多くを入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、3つの課題の中で、2つの課題についてはほぼ達成した。また、第3の課題についても、その達成のめどが立っていることから、計画はおおむね順調であると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019(令和元年)の計画については、2018(平成30年度)から引き続きの課題である『タットヴァ・サングラハ』『同・パンジカー』「イーシュヴァラ・パリークシャー」のテキスト作成を完成すること、さらには、当初、2019(令和元年)に計画していた、同テキストの英訳、『ニヤーヤ・ブーシャナ』の試訳を遂行することを計画している。後者については、まず日本語試訳を完成させたのち、英訳作業にはいることとする。これらの計画については、特に新たな課題が生じることは想定していないが、英訳にあたって、前年度(2018)のように、アメリカの研究者の協力を得る時期が確保できるかどうかが問題となろう。現在日程を調整中である。
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Causes of Carryover |
2018年度夏休みに予定していた、アメリカにおける研究者との共同研究(英訳についての協力を得る)が、同研究者の都合により不可能となったので、その準備及び研究旅費が未使用となった。この共同研究を、当初の計画にはなかったが、2019年度に実施する予定である。さらには、6月にドイツ、ライプチヒ大学で、本研究テーマと深くかかわるプラジュニャーカラグプタの著作『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ』及び同書の注釈であるヤマーリ作『同・ティーカー』に関するワークショップが行われる。このワークショップには、本研究に関連する分野を研究する内外の研究者が集まるので参加することとし、そのために旅費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)