2018 Fiscal Year Research-status Report
アバヤーカラグプタ著作の新出梵文資料校訂を通したインド仏教の学知形成様態の解明
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18K00074
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Research Institution | International Institute for Digital Humanities |
Principal Investigator |
苫米地 等流 一般財団法人人文情報学研究所, 仏典写本研究部門, 主席研究員 (60601680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 和雄 駒澤大学, 仏教学部, 講師 (00509523)
倉西 憲一 大正大学, 仏教学部, 非常勤講師 (90573709)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 後期インド密教 / アバヤーカラグプタ / アームナーヤマンジャリー / サンスクリット写本 / テクスト校訂 / 人文情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近年中国よりサンスクリット・チベット語バイリンガル写本の影印版が出版された、後期インド密教の重要文献であるアバヤーカラグプタ作『アームナーヤマンジャリー』第5-8章のサンスクリットテクスト校訂出版を主要な目的とする。2018年度は、『アームナーヤマンジャリー』第5-8章のTEIガイドライン準拠XMLデータ化を終え、このデータに基づいて同第5,6章の校訂テクストのドラフト版を作成した。2018年9月には、海外研究協力者の出席を得て上記校訂テクストを用いた5日間のワークショップを人文情報学研究所および大正大学綜合仏教研究所にて開催した。当該ワークショップには、本研究課題関係者に加えて、同文献に関心をもつ多数の研究者の参加を得、テクスト校訂および読解に関する問題点を集中的に議論し、校訂テクストの改善に資する知見を多く得ることができた。なお、2019年度においては、研究代表者および研究分担者がドイツ・ハンブルク大学の研究協力者のもとを訪ね、同地にてテクスト読解のワークショップを開催する。また、テクスト校訂と並行して、アバヤーカラグプタが同文献を著すにあたり参照したと考えられる文献を精査し、その成果の一部を論文として公開した。更に、研究分担者の2名は、アバヤーカラグプタの顕教分野における主要著作『ムニマタアランカーラ』およびアバヤーカラグプタの系譜に連なる学僧ラトナラクシタの著作の校訂研究を行ったほか、後期インド密教の重要聖典である『サルヴァブッダサマーヨーガ』の和訳研究において『アームナーヤマンジャリー』より得られる知見を活用しその成果を公表した。以上の業績は、新出資料である『アームナーヤマンジャリー』の内容を解明するにとどまらず、より広範な文脈においてアバヤーカラグプタがインド仏教史上において占める位置を解明することに資する重要な意義をもつと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において校訂予定の『アームナーヤマンジャリー』第5-8章のうち、分量的に二分の一強にあたる第5,6の2章について基礎的なテクスト校訂およびその内容検討を2018年度中に終えることができた。また、当該文献校訂のための基礎作業の重要な一部である、引用・パラレル文献調査も一通り完了し、その成果を論文として公表することができたほか、アバヤーカラグプタの他著作および彼に連なる学僧の著作の検討も並行して進めることができた。以上から、本研究課題は当初の予定どおり進捗しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降も同様に、『アームナーヤマンジャリー』テクスト校訂を軸として、同書著作の背景および後代への影響の解明を進めてゆく。2019年度は、同書第7,8章の基礎校訂本を作成し、海外研究協力者を含めた研究体制のなかでテクスト校訂の問題点を洗い出し、校訂本の改善を図る。2019年度は、ドイツ・ハンブルク大学において海外研究協力者とともにテクスト読解のワークショップを開催する。2020年度においては、海外研究協力者を招聘、あるいは研究代表者・分担者が海外研究協力者を訪問するかたちで同様のワークショップを開催し、それまでに準備した基礎校訂テクストを再度検討、最終的な校訂テクストの完成を目指す。
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Causes of Carryover |
研究分担者1名(加納)が、当初予定の出張を中止したことと予定の物品・書籍を購入しなかったことにより同分担者に次年度使用額が発生した。これと2019年度請求分を合算した額653,241円(2019年度分分担470,000+次年度使用額183,241)は、同分担者において、旅費および物品費として使用する。そのおおよその内訳は、海外旅費350,000円、国内旅費150,000円、物品費153,241円とする。
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Research Products
(9 results)