2020 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける伝統儀礼の産業化の背景と影響に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
18K00075
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 儀礼 / 産業化 / インドネシア / 冠婚葬祭 / コロナウィルス感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドネシアにおける冠婚葬祭業の発展という視点から、当該地域における死生観の変化を明らかにしようとする研究である。今年度の調査においては、コロナウィルス感染症の拡大に伴い、現地におけるフィールドワークが不可能となる中で、インターネットメディア等における情報収集が中心とならざるをえなかった。一方、今回の感染症拡大を通して本研究課題が思いもよらない展開をみせるとともに、これまで以上の研究上の重要性を含んでいることも明らかとなった。まず、人口が稠密で医療的資源の脆弱なインドネシアでは今回の感染症拡大によってASEAN諸国の中で最大とも言われる感染者と死者を生んでしまった。このことは大きな社会的インパクトを生んだ。他方、感染症死者に対しては国による公衆衛生的視点からの介入により、かなり徹底した隔離が行われ、従来の慣習法的な葬送が困難になっている。この公衆衛生というファクターの介入によってインドネシアの葬儀をめぐる風景は大きく変わろうとしている。従来型の葬儀ができないことに不満や不安を感じる遺族がいる一方で、これを機に規模の大きな慣習法的儀礼を見直そうとする動きも見られる。葬送業についても、副業的に参入していた個人経営者たちが撤退を余儀なくされ、「安全な」設備をもった大規模業者の拡大が目立つ。コロナ元年とも呼べる2020年度のデータは今後のインドネシアにおける死生観の変化を考える上でも重要なデータとなるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染症の拡大による渡航制限により、インドネシアにおける現地調査ができず、インターネットメディア等での報道を通しての調査にとどまってしまったため。しかし同時に今回の感染症拡大に関わる重要なデータも得ており、評価としてはやや遅れているという程度で十分に目的を達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も直接の現地調査は困難であると考える。そこでインドネシアにおける状況をより詳細に把握するため、2名のインドネシア人研究者の協力を仰ぎ、現地の業者への聞き取りを行う予定である。また、日本における感染症下における葬送の問題について情報収集を行うため、1名のポスドク研究員を雇用する。これらによって遅れを取り戻して今年度の目標を達成する。
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Causes of Carryover |
参加予定であった国際学会の中止、および実施予定であった現地調査の中止による。現地研究者への調査委託と国内ポスドクの雇用によって使用する予定である。
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