2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00077
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
鶴岡 賀雄 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (60180056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神秘主義 / スペイン / キリスト教 / 十字架のヨハネ / ライモン・パニカー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナウィルス蔓延状況が継続し、予定していた海外(スペイン、フランス)での研究交流および資料調査はできなかったが、国内で研究を継続し、概ね以下の成果を得た。 スペイン神秘主義の中心人物の一人である十字架のヨハネの思想について、とくに主著『霊の讃歌』における神と人との関係性の機微を探る論文を3編執筆した。うち1編は2020年度に概ね完成されていたもので2021年度に刊行された。他の2編は、2022年度に学術誌および共著論文集に掲載が決まっている。本年度刊行予定の2編は、それぞれ仏教ないし禅思想、イスラム神秘思想との対比の中で近世スペインの神秘思想の性格を際立たせる意図をもち、いずれも、現代的研究視点を導入して、近世と現代の宗教思想が影響作用史的に交流する場面での新たな読解を試みたものである。 ほかに、アビラのテレジア、ルイス・デ・レオンといった、他の神秘家を主題とした研究も推進し、後者については本年度中に研究成果を公表予定である。 現代に視点を据えた研究としては、近世スペイン神秘主義の大きな影響ののもとに独自の現代的神秘主義概念を構築したアンリ・ベルクソンとミシェル・ド・セルトーを中心として、おもにフランスでの神秘主義研究状況について知見を深めた。最も現代的な神秘主義研究者といえるセルトーについては、主著『神秘のものがたり』の精読を進めており、本年度中に全訳の完成を目指している。 かれらを含めた十九世紀末から二十世紀中葉にかけての欧米における「神秘主義」理解の諸相については、ひろくサーベイを行い、関連文献の収集と読解を継続している。本年度中に、その全体を展望する論文を執筆すべく準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス蔓延状況が好転せず、フランス(パリ)における二十世紀初頭の神学系雑誌の調査、およびスペイン(バルセロナ、ジローナ)におけるライモン・パニカー(神秘主義思潮の動向を深く引き受けて独自の宗教共存思想を開拓した哲学者)の関連資料の参観・蒐集を兼ねた研究交流、を目的とする二つの海外出張が実現できなかった。 近世スペイン神秘主義の近現代における受容史や、それにもとづく近現代の神秘主義概念形成についての研究は、関連資料が予想以上に多く、十字架のヨハネ等に即した個別研究は進捗したが、全体を見通す研究の成果公表にまで到らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度後半には、スペインへの出張が可能になると予想されるので、所期の成果を得たい。フランスにおける調査は、これまで入手した資料の状況に鑑みて、本研究の遂行に必須とはいえないことがわかったため、行わないこととする。 研究成果の公表については、これ以上遅滞なく進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延状況にともない、所期の海外出張が不可能となり、そのために予定していた出張費が支出されなかった。また参加予定の国内の学術大会も多くがオンライン開催となり、出張費が不要となった。 本年度は、海外出張および国内出張のために相当額が使用される予定。 また、さらに入手が求められる資料・書籍が相当数発生したので、その購入にも使用される予定である。
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Research Products
(5 results)