2019 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における暦の流通と仏教・神道・陰陽道の展開に関する宗教社会史的研究
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18K00092
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
岡田 正彦 天理大学, 人間学部, 教授 (00309519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 育世 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (00723173)
林 淳 愛知学院大学, 文学部, 教授 (90156456)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏暦 / 神宮暦 / 皇紀 / 貞享暦 / 明治改暦 / 暦政策と宗教 / 視実等象儀 / 神宮大麻 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、各研究分担者の個別の研究成果の公表に加えて、日本宗教学会・第78回学術大会において、当科研の代表者・分担者を中心に「近代における暦・国家・宗教」と題するパネル発表を行なった。各自の発表タイトルは、「近代における皇紀の成立」(林 淳/愛知学院大)、「明治改暦再考」(下村育世/東洋大)、「国民の祝祭日と仏教の忌日―『仏暦一斑』と『神宮暦』―」(岡田正彦/天理大)、「近代中国における暦政策と旧暦」(謝 茘/上智大学)であった。コメンテータは、中牧弘允(国立民族学博物館名誉教授・吹田市立博物館館長)が担当した。 個々の研究成果としては、林 淳は「渋川春海と貞享改暦」(日本カレンダー暦文化振興協会講演・8月31日)などの講演活動のほか、奈良市吉川家文書の史料調査や渋川家関係の調査を行なった。下村育世は「昭和戦中期の暦――暦と大麻の頒布強制と頒暦数の急伸」『高崎経済大学論集』(第62巻第1号、2019年6月、74-104頁)を発表した。また、暦文教ミニフォーラムでの講演(2019年4月)のほか、群馬県立公文書館や茨城県立歴史館での行政文書の調査を行なった。代表者の岡田正彦は、ドイツ・ハイデルブルク大学での招待研究発表(Buddhist Astronomy and Buddhist Science in 19th Century Japan、2020年2月14日)などのほかに、研究協力者とともに熊本市の「時計の大橋」及び熊本市立熊本博物館において、田中久重の製作した視実等象儀の実物調査を行ない、これまで確認されていない貴重な事実を発掘することができた。これらの調査結果については、最終年度の報告書に詳しく紹介する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年、2019年の二回、日本宗教学会の学術大会においてパネル発表を行ない、どちらも高い評価を受けた。これまで、日本の宗教文化史や思想史ではあまり取り上げられてこなかったテーマに切り込むことによって、新たな知見が得られたばかりでなく、多方面の研究者との交流が深まりつつある。しかし、2020年初頭からの新型コロナウィルスのために、予定していた研究発表や調査活動はすべてキャンセルされた状況である。科研のメンバーとともに申込み、すでにパネル発表も受理されて、最終年度の研究業績として2020年夏に参加予定をしていた国際宗教史宗教学会(ニュージーランド)も開催中止となった。最終年度に予定していた、国際学術大会でのパネル発表や国内でのシンポジウムの開催などは、実現が難しい状況になっている。予定している報告書の作成は進めたいが、研究発表の機会や調査の機会を確保するためには、研究期間の延長も検討せざるを得ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最初の2年間は、かなり順調な調査と研究成果の公開を積み重ねることができた。しかし、2020年になってからは、新型コロナウィルスの流行にともない、ほとんど研究活動が停滞している状況にある。これまでの調査結果や資料の分析は進められるが、新規の調査は極めて難しい状況であるし、各種の研究会やシンポジウムなどは全国的に中止される状態になっている。 最終年度に予定していた活動のなかでは、調査結果にもとづく報告書の作成は可能であるが、国際学会でのパネル発表やセイコー博物館でのシンポジウムの開催などは、かなり難しい状況になっている。今後のコロナウィルスに関連した大学や研究機関等の状況次第では、研究期間の延長を含めた対応策について検討していきたい。とりあえずは、最終年度における研究成果の公開を目指しながら、この後の状況を慎重に見極めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
この共同研究では、科研費の最終年度で国際学会での成果発表と国内でのシンポジウムや展示会を予定していました。最終年度に多くの費用を残した理由は、これらの研究成果の公開のためです。 すでにニュージーランドで開催予定であった「国際宗教史宗教学会」にパネル発表を申し込み、共同研究者によるパネル発表を承認されていましたが、新型コロナウイルスの流行により国際学会は中止になり、2020年秋に予定している記念展示やシンポジウムの開催も危ぶまれています。場合によっては、年度末に研究活動の延期を申請し、次年度に研究成果を公表することも考えています。
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