2018 Fiscal Year Research-status Report
人民の意志から人民の理性へ;19世紀フランスにおける理性と社会
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18K00094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金山 準 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30537072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理性 / 社会的なもの / 人民主権 / 自由主義 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最大の目的は、19世紀フランス思想における「社会(的なもの)」を、統治の根拠たるべき「理性」との関連から検討することである。正統性の根拠の「意志」から「理性」への転換や、統治の合理化といった発想は、19世紀の自由主義に広く共通するものである。この問いと19世紀における社会的なものの前景化との連関が、本研究の最大の関心となる。 より具体的な対象としては、ピエール=ジョゼフ・プルードンの思想について、同時代のリベラルを補助線として検討する。プルードンは一般的に社会主義者とされるが、恣意的な支配としての「専制」への警戒や、国家権力の肥大化に対する批判などの点で、むしろリベラルとの共通性が大きいためである。 研究の初年度にあたる30年度は、プルードンの理性論、とくにその「集合理性」概念について検討した。集合理性とは社会における集合作用によってのみ生まれうる点で個人理性とは峻別され、そのようなものとして「主権」を担うべきものである。彼にとっては、たとえばルソーの人民主権論のように「意志」が主権を担う可能性は否定される。 なお、意志に対する理性の優位にもとづく「理性主権」論を論じた同時代の論者にギゾーらがおり、彼もまた、社会から引き出される「公共理性」が主権を担うべきとする。ギゾーとプルードンとの親近性はこの点で明らかであるが、ここでプルードンの独自性は、その理性を生み出す「集合」プロセスに対するより包括的な考察にある。それを通じて理性の生成をより「民主的」・社会的なものとすることで、人民による自己立法を(意志ではなく理性という経路を通じて)可能にすることがプルードンの集合理性論の眼目である。これらの点については、「プルードンの集合理性論--自律・社会・コミュニケーション--」(『思想』1134号、2018年9月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主権の担い手としての「集合理性」をめぐる同時代のリベラルとプルードンの関係・異同については、かなりの程度まで明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の焦点は大きく二点に大別される。 第一に、プルードンにおける理性概念は、「正義」「理想」「理念」「労働」などの他の重要な概念と密接に関連しており、それらとの関係を検討することで、社会と理性の関係をより包括的に描き出すことを目的とする。 第二に、プルードンとの比較の対象として、ギゾーら体制派のリベラルのみならず、むしろ主流派とならなかったリベラルの潮流(コンスタンやトクヴィルなど)との関係についても検討する。
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Causes of Carryover |
二回を予定していた国内出張について、他業務や私的事情との兼ね合いにより一回のみの実施となったため、その分の額が次年度使用額として残った。該当分は、次年度に予定している国内出張あるいは海外出張への充当を予定している。
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Research Products
(1 results)