2020 Fiscal Year Annual Research Report
Chen Duxiu's Philology and Linguistic Thought
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18K00096
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
村田 雄二郎 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (70190923)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 陳独秀 / 文字改革 / ピンイン / 五四運動 / 中国近代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代中国の言語統一/文字改革の問題を考察した論考を整理・編集し,中国語版で刊行した。『語言・民族・国家・歴史──村田雄二郎中国研究文集』(楊偉主編,重慶:重慶出版社,2020年6月,228頁。) 陳独秀の「中国ピンイン文字草案」に関する考察を進め,学術論文にまとめる作業を進めた。その梗概は以下の通りである。陳独秀の言語文字問題への関心は清末以来のことだが,五四時期にはエスペラントの併存をも許容し,国語で文を書くには各省の多数者に通用する言葉を採用すべきとした。文字は廃すべきだが,言語は国家・民族などの観念があるうちは廃止し難いので,過渡期にあっては漢文を廃して漢語を残し,ローマ字で書くべきだと言う主張で,言語に関しては「革命」というより漸進的改革論であった。音韻学・文字学への関心は早くからあり,第二革命後の上海時代には『字義類例』,国共分裂後の上海時代には『中国ピンイン文字草案』,南京監獄時代には『実庵字説』,そして晩年の江津時代には『小学識字教本』の著述に専念するなど,革命活動と表裏しつつも,文字への関心は一貫していた。1927年8月に失脚すると,漢字のローマ化問題の研究に専念し,私案『中国ピンイン文字草案』を作り上げた。彼は五四白話を「洋八股」「新文言」だとして痛烈に批判したが,それは漢字文化が民衆を排除してきた歴史と現状を重く見るからである。国語運動に対しても,民衆の生きた言葉ではないと退け,方言をも許容する「普通語」の可能性を論じた。そこに見られる特徴は,大衆文学の創造という面では「文化革命」を堅持して五四白話を退けつつも,過渡期における言語改革の「穏健」路線を目指したことであった。 なお,当初予定していた中国の国際会議での研究発表は,コロナ禍の影響により実現せず,資料収集も同志社大学,東洋文庫における資料調査を除いて,ウェブ上のデジタル資料を用いた。
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