2019 Fiscal Year Research-status Report
初期近代における世界の多様性の認識――日中欧の比較研究
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18K00097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川出 良枝 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10265481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 勉 愛知教育大学, 教育学部, 特別教授 (30209382)
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20251499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多様性 / 日本 / 中国 / ヨーロッパ / 比較思想 / 思想史 / 寛容 / 礼教 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には二回の研究会を開催した。2019年5月に東京大学において全員が参加する研究会を開催し、今後の方針を決定した。とりわけ、比較に際しての基本テーマとして、1)多様な宗教とどう共存するかという問題設定の下、東アジアの包摂あるいはシンクレティズム、ヨーロッパの寛容が鍵となることが明らかになった。また、多様な他者との交流を支える条件としてのcivilityや礼教の重要性についても共通了解が深まった。あわせて、経済あるいはポリティカル・エコノミーをめぐる諸議論、とりわけ商業活動の全世界的拡大に関する日中欧の思潮の再検討も課題となった。これらのテーマについて、今後、各自が研究を深めることが了承された。 2020年1月にフランスのリール大学教授のG.ラディカ氏を招聘し、モンテスキューの法概念における緊張関係、すなわち自然法の普遍性と実定法の多様性についてセミナーを開催した。セミナーには、アメリカ植民地に関する若手研究者からの報告もあり、多様性をめぐる議論に、新たに、帝国という視点を加える必要があることが明らかになった。 その一方で、代表者・分担者はそれぞれの地域に関して研究をすすめ、学会発表や論文等の形で刊行した。川出は、日韓政治思想学会に参加し、Rousseauの国際平和論について報告、また「寛容」について論文を刊行した。前田は、丸山真男の江戸思想史観を分析するなど、日本思想に内在する問題をさらに深く討究した。伊東は台湾での招待講演の他、ISEAP 2019(国際東アジア哲学学会)にて儒教の身体論とデカルトの身体論を比較する報告を行った。また、明清時代の礼教化とも言うべき趨勢に関して、同時代の東アジア規模で、比較史的・比較思想的にも考察や検証を深め、相互の普遍性や共通性、共時性とともに、国や地域による個別性や特殊性の双方を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究を推進するための全体研究会と海外からのゲストや若手研究者に報告の機会を与える研究会を開催し、相互に知見を広めつつ、具体的な成果の刊行に向けて準備を行うことができた。全体のテーマと連動する個別の研究についても、各人が活発に学会報告や論文の刊行を行った。また、台湾、韓国、また日本で開催された国際学会に積極的に参加し、報告を行った。誠に残念ながら、2020年初頭より新型コロナウィルスの感染拡大による海外渡航の制限があったため、国際アダム・スミス学会など、2月以降に予定していた国際学会での報告のいくつかキャンセルになってしまった。とはいえ、論文という形での国際的な研究成果の刊行の準備はこの間も着々と進行しており、Web会議システム等をもちいて国内外の研究者と活発に打ち合わせの機会を設けるなど、全体として、おおむね順調に進呈していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開催した研究会において、比較思想の新しい方法論についてある程度の共通認識が深められた。これを元に、日本、中国、ヨーロッパを研究対象とする3名が、この比較思想の方法論をそれぞれの地域に関する研究に適用することで、既存の研究に新しい視点を投入する作業を今後も一層推進する。最終的な目標である共著の刊行のために、具体的なロードマップを形成し、研究を推進する。新型コロナウィルスの問題があるため、国内の移動、海外渡航の制限という不確定要因があるが、今後もメールやWeb会議システムの活用などによって、克服していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、川出が3月に予定していた海外出張が不可能となった。また、春休みに全体研究会を予定していたがこれも開催が延期となり、謝金の支出(学生バイト)が不要となった。今後、国内・海外への移動が制約される事態が想定されるが、状況が好転すれば、研究会の開催や国際学会への参加を2020年度におこなう。もし、状況が厳しい場合においても、Web会議システムを用いたヴァーチャル研究会を開催する。その場合、技術サポートを委託するための謝金支出も考えている。併せて、英語・中国語・フランス語等による論文の執筆、刊行はさらに積極的に推進する。そのための校閲費用の支出も予定している。
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Research Products
(11 results)