2018 Fiscal Year Research-status Report
The Theoretical Foundation of Sexual Diversity in Lacanian Perspective
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18K00098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 和之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00293118)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラカン / 性の多様性 / フロイト / バトラー / フーコー / 同性婚 / エディプス・コンプレックス / 性別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はフランス語・英語文献を中心に、ラカンの精神分析からみた性の多様性を論ずるにあたって基本となる枠組みと概念を検討する作業を行った。 基本的な枠組みについては、2018年度日本ラカン協会の大会シンポジウムで発表した内容をもとに、ラカンの議論を精神分析における性の多様性をめぐる議論の歴史の中に位置づけ、その特徴と可能性を明らかにする論文「性の多様性に向き合うラカン――「もう一つのエディプス」から出発して」をまとめ、協会の論集『I.R.S.』に発表した。また基本的な概念となるラカンの「言語」概念について、「場所」としての「言語」という観点を導入することで、ラカンがこれを中心的に論じた50年代の議論を、60年代の議論へと接続することが可能になることを、主として『セミネール』を参照しながら具体的に示した論文「言語(ロゴス)と場所(トポス)―シニフィアン連鎖、バベルの図書館、オイラー図」を所属専攻の紀要『Odysseus』に発表した。さらに同じく基本的な概念となる「知」の概念について、論文「知る」をまとめた(2019年度刊行予定)。 そのほか同性愛と結婚の関係について、2018年2月に公刊されたミシェル・フーコー『性の歴史』第四巻を、そこに現れる古代キリスト教的な結婚観という観点から検討したほか、最近の同成婚や家族の在り方をめぐる英仏の文献を広く調査した。 また2019年3月には成蹊大学で開催されたWorkshop: Deviating with and from Freudに参加し、口頭発表"Why Is Psychoanalysis Called So? : Psychoanalysis in the Conceptual History of Analysis"を行い、精神分析史研究で著名なジョージ・マカーリ氏から、本研究の思想史的な広がりについて有益な指摘を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査や考察等の作業はおおむね順調に進んでいるが、申請書提出後に学内で複数の役職を兼務することが決まったことなどから、予定していた海外調査等を実施することがかなわなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度2019年度にできるかぎり学内行政部分を整理し、また来年度にサバティカルを取得するなどして渡航調査に必要な時間を確保する。
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Causes of Carryover |
申請書提出後、2018年度に学内で複数の役職を兼務することが決まったことなどから、予定していた海外調査等を実施することがかなわず、その分の旅費の執行ができなかった。
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