2019 Fiscal Year Research-status Report
The Theoretical Foundation of Sexual Diversity in Lacanian Perspective
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18K00098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 和之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00293118)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラカン / 性の多様性 / フロイト / エディプス・コンプレックス / 性別化 / バディウ / 村上春樹 / 大江健三郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画2年目となる2019年度は、研究の核となるエディプス・コンプレックスの読み直し、および本研究にとって中心となる「性別化」をめぐる議論が展開される後期ラカンの議論の全体的な検討に取り組んだ。 エディプス・コンプレックスの読み直しに関しては、女性の性別化をもカバーする「一般化された欲望の弁証法」の観点から、現代日本文学(大江健三郎、村上春樹)の作品を読むことで、作品理解が深まるばかりでなく理論の側にも新たな展開が示唆されることを示した論文"Deconstructing the Oedipus Complex: Kenzaburo Oe and Haruki Murakami on the Way to a Theory of Global Culture"を執筆し、これは英語の論集の一部として公刊された。またこの論文の議論を補完する内容の発表"The Other “Track” of the Dialectic of Desire in Haruki Murakami’s 1Q84"を、この論集の編者J.-M.Rabate 氏を招いて行われたワークショップで行った。 後期ラカンの議論については、これを主題的に取り上げて論じたアラン・バディウのセミネール記録の翻訳を準備し刊行した。またラカンの議論のうちに「反哲学」を見る彼の議論について、日本ラカン協会の大会シンポジウム「フロイディスムと哲学」において提題を行った。これ以外に、ラカン最後期のセミネール『サントーム』をテクスト注釈のレベルで詳細に検討したほか、後期ラカンの観点から性的多様性の臨床的な事例にアプローチするフランスの研究者の著作を検討した。 また12月にフランスに短期の渡航を行い、資料調査を行うとともに現地の分析家らとインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査や考察等の作業は順調に進んでいるが、引き続き学内の役職を担当するなどで日程的な制約があったことから、昨年生じた海外調査等の実施の遅れを取り戻すには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度2020年度もコロナウイルスの感染拡大の影響により、海外渡航については大きな制約が生じることが予想され、上記の遅れを取り戻すことは著しく困難と思われるため、研究期間の期間延長を行い来年度にサバティカルを取得するなどして渡航調査に必要な時間を確保することを考えたい。
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Causes of Carryover |
学内役職の担当などがあり日程の制約があったことから、海外調査等について昨年度生じた研究の遅れを解消するに至らなかった。2020年度に解消すべく計画していたが、コロナウイルスの感染拡大にともなう渡航制限によってこれが困難になると思われるため、研究期間の期間延長を申請して2021年度に研究計画を完了することを目指す。
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Research Products
(5 results)