2022 Fiscal Year Research-status Report
Japan-Germany joint research on the ideological historical significance of <Basic Income> to <Sustainable Society>
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18K00103
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
別所 良美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 名誉教授 (10219149)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Basic Income / 持続可能な社会 / フェミニズム / 家事労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、コロナ感染状況の影響により海外との研究交流が行えず、大学退職後のため自宅での文献研究や論文執筆が中心となった。 2022年度は、フェミニズム運動とベーシック・インカムとの理論的な関係に焦点を当てて文献研究を行った。特に1970年代の欧米を中心に広がった「家事労働に賃金を!」キャンペーンや家事労働論争を対象として、いわゆる第二派フェミニズム運動が家庭と職場との分離、無償労働と賃労働との分離を批判し、家事労働の無償性を問題化したことに注目した。マリア・ローザ・ダラコスタやセルマ・ジョーンズらの「家事労働に賃金を!」という戦略テクスローガンは、家事労働やケア労働の賃労働化を要求したのではなく、賃労働(市場労働)の外部に追いやられている社会的な生産・再生産労働の正当な評価を要求したものであり、ベーシック・インカムの要求とつながるものである。すなわち、市場労働に就かない人々も社会的な生産・再生産労働を担っているのであり、その社会的貢献を市場価値で評価できない場合でも何らかの仕方で社会的に評価すべきであるというのがダラコスタらの理論の核心であり、これはすべての市民に基本所得という形で彼らの生存権を保障すべきとするベーシック・インカムの理論と通底するものである。詳細は、論文「「家事労働に賃金を!」戦略の再考―女性抑圧と階級搾取」(東海ジェンダー研究所編『ジェンダー研究が拓く知の地平』明石書店、2022年)で展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は、新型コロナウイルスのために、ドイツ等の海外研究者との研究交流や国際シンポジウムは準備作業を進めることができなかった。研究の中心は文献研究と国内でのリモート研究会の実施であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月現在、日本でも新型コロナウイルス感染症に移行され、海外との研究交流も可能になるので、2021-2022の文献研究の成果を踏まえて海外との研究交流を実現する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために、海外出張や海外からの研究者招聘のための予算が執行できなかったため。2023年度から海外との交流が自由になるのでドイツ等の研究者と調整して海外出張などを行う。
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Research Products
(1 results)