2018 Fiscal Year Research-status Report
内村鑑三の「無教会」と日本思想史の文脈における「無所属」「無党派」の研究
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18K00112
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東島 誠 立命館大学, 文学部, 教授 (10364837)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無縁 / 無教会 / 無所属・無党派 / 人格的/非人格的支配 / 公共性・公共圏 / 神観念 / 内村鑑三 / 網野善彦 |
Outline of Annual Research Achievements |
「内村鑑三の「無教会」と日本思想史の文脈における「無所属」「無党派」の研究」と題する本研究は、日本社会の公共性の構造や、歴史学者網野善彦の「無縁」論にも通ずる特有の「神観念」のありようの解明を目的として、無教会キリスト教を中心的対象としつつも、より広く、「無所属」「無党派」を標榜する思想を、歴史貫通的な問題史として掘り下げていくことを課題とする。 2018年度の研究は、下記「進捗状況」に記した事由から、初年度計画として予定していた「無教会思想の社会運動的側面」の掘り下げを、2年目以降へと繰り下げ、代わりに3年目に予定していた、通時代的な史料収集を優先的に推進することとした。内村鑑三・無教会関係については今井館教友会、群馬県立文書館等で調査を実施し、通時代的史料収集は、国立公文書館、東京大学総合図書館・史料編纂所・明治新聞雑誌文庫等で実施した。 以上はデータ収集段階であるため、論文形式での成果公表には至っていないものの、一方で、関連する問題意識を述べた論文については、2編公表した。 まず、日本社会の公共性の構造の解明の一端として、歴史学者網野善彦の「無縁」論がなぜ1970年代末に登場するかについては、同時代の思想状況の分析に基づき、「歴史の曲がり角としての1970年代」の問題である、と論じた。また、無教会、無所属、無党派の研究の根本問題が、日本社会に特有の属人的組織をいかに相対化しうるか、にあることから、その派生的課題として、日本政治史上の人格的支配の優位、非人格的支配の困難さ、というヴェーバー的課題が、1960年代の政治思想状況においていかなる意味を持ち、いかに思索されたか、について、石母田正、佐藤進一、丸山眞男らの言説を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時点に予期していなかった要素として、2018年4月より勤務大学の文学部副学部長に着任することとなり(任期2年)、会議・出張等に多大な時間を取られ、このため本研究へのエフォート割り当てを、当初予定していた率まで確保できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
無教会思想の社会運動的側面を掘り下げるため、足尾銅山鉱毒事件関係史料、とりわけ演説会の史料の収集・分析を推進する。 また、「非」でも「反」でもない、「無」によって打ち消される諸概念への注目は、本研究の根幹をなすものであるが、一方で2018年度に、日本社会における「非人格的」という問題を再定位しえた成果にもとづき、「無」と「非」の相関、また「無」と「反」の相関についても、引き続き注目したい。 さらに、当初2年目に予定していた、1890年前後生まれの無教会世代が、戦後、等しく天皇を中核に置く共同体を構想してしまう、という特異な現象の解明については、2018年度に参加し発言もした、第33回内村鑑三研究セミナーでの黒川知文氏の報告に刺激を受けつつ、推進していきたい。
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Causes of Carryover |
66,000円の書籍の購入元である古書店が、納品後間もない時期に、不慮に倒産したことにより、会計処理上のズレが出たため。 次年度使用額として計上されているが、実質的には当該図書は購入手続きを完了しているため、新たな使用計画を要しない。
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Research Products
(2 results)