2021 Fiscal Year Research-status Report
16-18世紀インドにおける存在一性論の継承についての実証的研究
Project/Area Number |
18K00114
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石田 友梨 岡山大学, 社会文化科学学域, 特任助教 (60734316)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 思想史 / 存在一性論 / 伝記 / インド / アラビア語 / テキストマイニング / OCR / Digital Humanities |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドにおける存在一性論の継承を明らかにすることを目的としている。Aの思想とBの思想が似ていることからだけでは、同時発生的に生じた可能性を排除できないため、AからBへ(あるいはBからAへ)思想が継承されたと断じることはできない。「AはBの師であった」、「Aの思想書をBが学んだ」などの事実が裏付けとして必要である。そこで本研究では、16-18世紀のインドを中心とした思想家たちの師弟関係について、伝記などの文献から情報を蓄積してきた。 たとえば、19世紀フェズの学者ジャアファル・ブン・イドリース・カッターニー(1905年没)は、14人を経てイブン・アラビー(1240年没)の思想を継承したと著書で述べている。この中には、17世紀マディーナで活躍したイブラーヒーム・クーラーニー(1690年没)も含まれている。クーラーニーの息子アブー・ターヒル(1733年没)は、インドからマディーナへ留学に来たシャー・ワリーウッラ―・ディフラウィー(1762年没)の師であった。ワリーウッラーの自伝によれば、彼は故郷のデリーでアブドゥッラフマーン・ジャーミー(1492年没)の注釈書などからイブン・アラビーの思想を学んだ後に渡航している。しかし、クーラーニーの系統からもイブン・アラビーの思想を学び、インドへ持ち帰った可能性があることを指摘できる。 「イブン・アラビー→クーラーニー→カッターニー」の系統のように、イブン・アラビーの著作について継承があったことを明記した文献がある場合には2、「クーラーニー→アブー・ターヒル→ワリーウッラー」の系統のように、師弟関係があったことを明記した文献がある場合は1といったように、継承の実証性を数値にしてデータベースを作成している。データベースを参照に、より確実な継承の系統から思想書の内容を比較していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航制限のために文献調査ができなかったことに加え、インターネットを通じて文献を入手できたとしても、PDFなどの画像ファイルの形式であることが多かった。画像ファイルからテキストファイルへ変換するためのOCR(光学文字認識)技術は、アラビア文字に対しては未だ不十分である。テキストファイルにした後も、アラビア語の文法を解析する技術に問題が残っている。このような現状から、当初予定していたようなテキストの機械処理を研究手法として用いることができなかった。しかし、テキストマイニング以外の技術を習得して試行錯誤を続けるうちに、業績を少しずつ出せるようになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
師弟関係という外枠の分析から、いよいよ思想の中身の分析に移る。イブン・アラビーの思想が注釈書によって学ばれてきたことから、注釈書を対象とする。アラビア語の思想書をテキストマイニングで大量に機械処理しても、現在の技術では意義ある研究結果が得られない。しかし、注釈書がイブン・アラビーの著書から文章を引用するという形式をもっていることから、文法解析行わずとも、文字数などから重視されてきた用語などを統計的に示すことができるとの見通しがある。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、文献調査や学会参加のための旅費の予算を執行できなかったため。次年度英語論文投稿の際に英文校正費として使用する予定である。
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