2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00116
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
我部 聖 沖縄大学, 経法商学部, 准教授 (30635256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 千代 沖縄大学, 経法商学部, 教授 (30322457)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 沖縄思想史 / 占領 / アジア思想史 / 沖縄戦後史 / 公衆衛生 / 沖縄文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代沖縄における思想の生成について、1945年の沖縄戦以後から2000年代に焦点を当て、歴史的に検証、考察するものである。 本年度は、「社会と思想」、「文化と思想」という2つの視点から、戦後沖縄で発行された新聞や雑誌、単行本に発表された沖縄をめぐる批評や評論、文学作品を収集するために、沖縄大学図書館、沖縄県立図書館、沖縄県公文書館、那覇市立図書館など主に沖縄県内の図書館で資料収集をおこなった。また故・岡本恵徳氏所蔵資料の予備調査をおこなった。 研究者との研究会等を通じて、意見交換をおこなった。沖縄大学大学院と同大地域研究所との共同研究会をおこない、とくに秋山道宏氏を招いての研究会では、1960年代の沖縄戦後思想や資料に関する討議により、本研究への理解が深まった。 我部聖(研究代表者)は、沖縄文学における「病」の描かれ方に関する論考を発表し、1945年~52年にかけて宮古、八重山、沖縄島で発行された文芸・総合雑誌に関する論考を執筆した(2021年刊行予定の『占領期地方総合文芸雑誌事典』一項目)。若林千代(研究分担者)は、占領期の公衆衛生に関する考察を論文としてまとめ、口頭発表(韓国聖公会大学)をおこなった。また同研究分担者による国際交流基金/東京芸大の口頭発表では、「Deep South(深南部)」という概念をめぐり、沖縄とタイ深南部の思想史的比較として、とくに沖縄の近現代史における「南」という概念について、山之口貘の詩や占領期の思想史を中心に発表した。故・屋嘉比収氏の時評集の解説の執筆を研究分担者が、「屋嘉比収著作目録」の作成を研究代表者がそれぞれ担当し、本年度はその準備作業をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、当初予定していた海外からの研究者を招聘しての国際学術会議や共同研究会が中止となった。オンラインでの開催も検討したが、翻訳や通訳の問題もあり不開催となった。 また昨年度は研究代表者・分担者ともに勤務校で役職につき、コロナ対策等に追われ、本研究を進めることが難しい状況にあった。さらに、本研究の研究成果報告として「社会と思想」、「文化と思想」という視点からまとめるにあたり、個人所蔵の資料にアプローチすることが有効であると研究方針を転換したことも進捗が遅れている理由である。 一方で、本研究に関して、研究代表者や研究分担者は研究論文や研究発表をおこなった。また研究会において、戦後沖縄思想史を社会運動や歴史学、文学に関する重要論文の検証を通じて、現代沖縄における思想の生成に関する基礎研究の基盤が形成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果を研究論文として発表する。また新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、沖縄県外への移動が難しいため、沖縄県内で資料調査をおこなう予定である。 本年度の予備調査において見つかった岡本氏個人所蔵資料を整理しつつ、本研究の成果として、「岡本恵徳著作目録」を作成する予定である。また沖縄近現代文学研究者の仲程昌徳氏が所蔵する資料について、資料保存と資料一覧(データベース)作成をおこなうことを考えている。資料調査、資料整理、データベース作成などでリサーチアシスタントや研究協力者の協力を得ることを考えている。
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Causes of Carryover |
国内やアジア各地から研究者を招聘して戦後沖縄の思想史に関する国際学術会議や研究会を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響でビザ申請や渡航制限などの問題が生じたことで中止となり、旅費を使用できなかった。また研究計画の見直しに時間がかかり、その間、リサーチアシスタントを雇用することができず、人件費を使用できなかった。 本研究を通じて、現代沖縄における思想の生成に関する基礎研究として、資料整備の重要性が再認識された。沖縄近現代文学、思想研究者の故・岡本恵徳氏の所蔵する資料の整理や沖縄近現代文学史研究者の仲程昌徳氏の所蔵する資料の保存、そして本研究成果のデータベース作成のために、資料整理・保存(資料分類のための保存箱・ファイル等の購入費や業者へのスキャン代)、資料調査(文献取り寄せや複写の遠隔サービス含め)、人件費に使用する予定である。
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