2018 Fiscal Year Research-status Report
Dance as an Art of Bio-Cosmic Subtle Energies
Project/Area Number |
18K00119
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
外山 紀久子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (80253128)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気 / 微細エネルギー / 舞踊 / ポストモダンダンス / 身体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマである「気」およびそれに類する概念が、特にアメリカの1960年代~70年代に展開したポストモダンダンスの文脈においてどのように語られ、その探求がどのような意義を有するのかについて、本年度は主に(1)マース・カニンガム、(2)アナ・ハルプリン、および(3)老いとダンスの関連を中心に研究を進めることが出来た。 (1)カニンガムはジョン・ケージとともにモダンダンスからポストモダンダンスへの道筋を開いた重要な舞踊家であるが、チャンス・オペレーションや多焦点性といった特徴のみならず、特に「音楽と舞踊の相互独立性」という劇場舞踊にとって前代未聞の課題を実行したことによって、翻ってダンスにとっての音楽性とは何か、踊ることによってのみ達成されると彼の主張する「エネルギーの拡大」が「気」とどのように関連しうるのかという、本研究にとって重要な課題を提起している。舞踊学会発行の『舞踊学』の編集委員長としてカニンガム生誕100年を記念するシンポジウム(9/9)を開催して特集記事をまとめ、『舞踊学』第41号に掲載した。 (2)ポストモダンダンスのもう一人の重要なパイオニアであるハルプリンに関しては、その長いキャリアの中で特に近年のワークショップの記録や映像資料に基づいて具体的な「気の身体」への接続のための技法を析出し、日本古来の文献に現れる「鎮魂」の技法との比較を行った。韓国舞踊学会からの招聘によってソウルでの国際シンポジウム(10/13~10/14)に登壇し、その成果を発表した。 (3)「老いと踊り」のテーマを扱ったベルリンおよび東京での国際シンポジウムを経て、数年来の共同研究者である中島那奈子氏と共編著『老いと踊り』(勁草書房)を上梓した(2019/2/20刊)。その中でミュージック・タナトロジーや整体に見られる「気」の問題と絡めて老いのドラマトゥルギーの可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「気の身体論」をめぐる基本的な文献研究、映像資料研究を進め、資料収集とともに、関連テーマによるシンポジウムの開催や国際学会での発表、著書(共編書)の出版といった形での成果をまとめることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き「気」と関連概念の比較研究を進め、カニンガムやハルプリン以外のポストモダンダンスの主要なメンバーに関して予断なく個別研究を行う必要がある。また舞台芸術の現場で語られる「気」の言説の整理、収集を行い、能楽論や武道、養生法などの多様な文脈に登場するそれとの照合や比較の精度をより高めるための研究上の方法論を平行して模索する。 7月の国際美学会議(ベイルート)でその成果の一部を発表し、そこからさらに今後の方向を確立するようなより実質的な論考をまとめるよう努める。
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Causes of Carryover |
物品費や謝金、旅費などの費目で執行状況を調整するための若干の変更が生じて、少額の繰越金額が発生した。
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[Book] 老いと踊り2019
Author(s)
中島那奈子、外山紀久子 編著
Total Pages
377
Publisher
勁草書房
ISBN
978-4-326-80060-5