2018 Fiscal Year Research-status Report
Cultural reception history of the ideal image of the Swiss chalet architecture in the 19th Century between inside and outside Switzerland
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18K00121
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河村 英和 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 特別研究員 (50649746)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スイス・シャレー / 19世紀 / ナショナル・アイデンティティ / チロル / 木造建築 / 郷土建築 / スイス村 / 万国博覧会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に直結した学会発表では、まず6月にジェノヴァ大学での学会「La citta' multietnica nel mondo mediterraneo. Storia, cultura, patrimonio(地中海の多国籍都市-歴史・文化・遺産)」で、「Segni dell’identita' nazionale dei diversi paesi nelle strutture ricettive in Italia. Il caso degli alberghi fondati dagli immigrati svizzeri(イタリアのホテルにみる各国のアイデンティティ-スイス移民が創業したホテルの例)」という題で発表(Bruno Mondadori社から2019年刊行予定)。この中で、19-20世紀イタリアで開業したスイス系ホテルには、外観にシャレ風の要素を反映させたものが少数存在していたこと、「小さなスイス」と呼ばれる一部の山地でも木造シャレ風ホテルがあったことを述べた。 10月はナポリ大学のヨーロッパ都市図像学会で、「Tipi e vicende degli chalet e villaggi svizzeri ‘fuori dalla Svizzera’ fra Ottocento e Novecento(19-20世紀「スイス国外」におけるスイス村とシャレの種類と変遷)」という題で発表(同時に電子出版済み)。ここでは、仏語「シャレchalet」が各国に普及する過程(19世紀前半はまだ、英Swiss cottage、独Schweizerhaus ・Schweizerei、伊capanna svizzeraという表現が一般的)を当時の文献から明らかにし、19~20世紀、各国の万博会場に建設された「スイス村」とシャレ風建築が密集したエリアの派生についてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中間研究発表に相当する論文と学会については、さきの「研究実績の概要」で述べたので、ここでは現在までに現地踏査したスイス・シャレ風建築(19~20世紀初頭)を列挙する。 国内では、文京区の岩崎邸の離れ、名古屋の聴松閣、芦屋の右近権左衛門邸の倉庫、京都の大山崎山荘と茶室、十和田ホテル。 イタリアでは、ナポリのVilla Lucia、Villa Cimmino、ソレントのVilla Favorita、イスキア島カサミッチョラの木製装飾破風付き建築群、チニゼッロ・バルサモのVilla Ghirlanda-Silva 、ローマのVilla Mazzanti、Villa Doria Pamphilj、Villa Torlonia、フィレンツェのViale Machiavelli、これらの一部の事例は丘陵部にあり、「山」をイメージした立地と関係があると推測できる。イギリスでは、ロンドンのSwiss Cottage、ロチェスターのSwiss Chalet。ドイツでは、ドレスデン(Caecilienstrasse、Grundstrasse、Bautzner Landstrasse)、ポツダム、ベルリン、プファウエンインゼルのSchweizerhaus、マグデブルクのスイスミルク小屋とHerrenkrug Parkhotel)。 スイスでは、大都市(チューリヒとベルン)の高級住宅街に折衷的なシャレ建築が散見されるのを確認。スイス最大の民家園「バレンベルク野外博物館」に移築された装飾的シャレ、シャレ建築の多いブリエンツ、ギースバッハのホテル、そして、シャレ建築が少ないエンガディン地方(マローヤ、サン・モリッツ)の状況も調べたところ、芸術家またはブルジョワ層向け住宅を中心にシャレが好まれるのが分かった。 以上、予想外の発見もでき、現存しないものについては、当時の写真や文書資料を現地の図書館で収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
18世紀後半、最も早くから「スイス風の小屋」の建築の流行が起こった英語圏(初期は外来仏語シャレchaletではなくコテージcottageと呼ばれた)では、スイスやチロルにある「本格的(オーセンティック)な」シャレとは似ても似つかぬもの、単に天然木の不規則性を生かした藁葺と木組みの「素朴な田舎家・農村建築 Rural Architecture」が、しばしばSwiss Cottageと命名され、貴族の庭園の一角に建てられることが多かった。本年度は、シャレと似ても似つかぬのに「スイスの~」と呼ばれた「田舎家」に焦点をあてた調査を行いたい。その事例の確認として、アイルランドのCahirとダブリン郊外SantryにあるSwiss Cottageの踏査を6月に行う。一方「スイスにあるものと同等レベルの」シャレがイギリスに実現した最も重要な事例は、ワイト島のヴィクトリア女王の離宮オズボーンハウス内のSwiss Cottageであるので、その踏査もなるべく本研究年度内に行いたい。 さらに19世紀のヨーロッパ各地で普及していったシャレ建築は、じつはスイスに範をとったものだけではなく、チロルやオーストリア、南ドイツのものとも混同されながら波及しているようなので、チロル周辺域のシャレ建築にも研究範囲を広げられることも目標とする。そのため8月末に、南独バイエルン州の町オーバーアマガウとコーブルク近郊ローゼナウ(コーブルクはヴィクトリア女王の夫アルバート公の故郷であるため、オズボーンハウスのSwiss Cottageの元ネタとなったSchweizereiがある)のシャレを見学する予定である。
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Research Products
(6 results)