2020 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語オペラ確立への軌跡:ドイツ語諸都市の上演状況比較から辿る自国語オペラ
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18K00123
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大河内 文恵 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (20463953)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オペラ / 上演史 / ドイツ語オペラ / イタリア・オペラ / ドレスデン / ベルリン / 劇場史 / 上演団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀半ばまでほぼイタリア・オペラ寡占状態だったとされてきたドイツ諸都市において、ドイツ語オペラがどのように確立・受容されていったかを上演史から読み解くものである。2020年度は、前年度の2つの口頭発表(「1765年から1830年までのドレスデンで上演されたオペラ: 上演言語と翻訳オペラの視点から」)(日本音楽学会第70回全国大会、2020年1月の早稲田大学オペラ/音楽劇研究所の研究例会)をもとに、ドレスデンとベルリンにおけるイタリア・オペラとドイツ・オペラの上演レパートリーの変遷を、それぞれの都市での劇場史・上演団体・オペラを取り仕切った人々の変化と併せて考察し、論文「七年戦争後のベルリンで上演されたオペラ:ドレスデンとの比較から」(『オペラ/音楽劇研究の現在―創造と伝播のダイナミズム』(水声社)所収)にまとめた。従来、民族意識の高まりによる結果として語られてきたドイツ・オペラの移行は、ベルリンにおいて移動オペラ団による上演から常設劇場への定着、宮廷オペラの併合と進み、宮廷オペラにドイツ・オペラ部門が創設されたドレスデンと対照的であることに象徴されるように、経営判断上の問題を射程に入れることで都市毎の傾向の違いが明解になる。ベルリンに関しては、18世紀のフリードリヒ2世時代にも視野が広げ、シンポジウム『ギリシア悲劇主題の18世紀のオペラ:イピゲネイア主題のオペラを起点として』において「18世紀ドイツにおけるギリシア悲劇を題材とするオペラ:グラウンの《イフィゲニア》を中心に」と題する口頭発表をおこなった。ギリシア悲劇のイピゲネイアに纏わるストーリーはラシーヌの『イフィゲニー』をきっかけにオペラ題材として人気を博すが、グラウンの《イフィゲニア》ではラシーヌの台本を換骨奪胎しイタリア・オペラの要素と混合し成立させていることが、台本および音楽の分析から明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため当初予定していた現地調査をおこなうことが困難になり、ウェブ上の資料での調査に切り替えたが、想定を上回る業務に追われたことにより作業時間の確保が難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きコロナ禍およびその影響により、現地調査をおこなうことは難しいと判断せざるを得ない。ウェブ上で公開されている史料・資料による調査を進めるとともに、現在遅れているヴィーンの上演レパートリーの整理を進め、ドレスデン・ベルリンの調査と併せて多角的な分析を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度には当初予定した研究が進まなかったため、2021年度に繰り越した。海外での調査は引き続き困難であると想定されるため、データ整理などに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)