2020 Fiscal Year Research-status Report
Empfindnis概念の系譜学的検討―美学の「感性論的転回」への概念史的寄与
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18K00126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 卓史 京都大学, 文学研究科, 准教授 (90644972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Empfindnis / フッサール / Gefühl / 感情 / 触覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前世紀末以降進展中の美学の「感性論的転回」に掉さしつつ、「感性」に関連する重要な概念であるEmpfindnis(「感覚態」「再帰的感覚」「感覚感」などと訳される)に系譜学的な検討を加えるものである。本年度は、前年度の研究成果から得られた課題である、1)フッサールにおけるEmpfindnis概念の内実と出所、ならびに18世紀のEmpfindnis概念との連関、および、2)ドイツ啓蒙主義において「感情」を意味するものとしてEmpfindnisという語が必ずしも定着せずGefühlに取って代わられた理由、について、それぞれ検討した。 1)にかんしては、まず用例分布上の特徴として、Empfindnisという語が遺稿『イデーンⅡ・Ⅲ』『間主観性の現象学』においてのみ使用されていることが挙げられる。その内実を構成しているのは、①局在化②二重性③感情④感情移入→間主観性、という四つの契機である。ただし、その出所ならびに18世紀のEmpfindnis概念との連関については、ブレンターノからの影響が大きいであろうという見通しは得たものの、実証するまでには至らなかった。 2)にかんしては、ヴォルフの『ドイツ語形而上学』(1720年)ではGefühlは五感の一つとしての「触覚」としてのみ用いられていること――Gefühlにおける「感情」の不在――を確認した上で、その後のいつ、どこで、いかにして「感情」という意味が生まれたのかを探った。早いものでは、マイアーの『あらゆる芸術の基礎』(1748-50年)でGefühlが「感情」の意で用いられている。同書はバウムガルテンの1742年の初の美学講義に由来するので、1740年代のバウムガルテンにおいてすでに「感情」という意味がGefühlに生じており、その「美学」の構想と相即的である、考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未解明の点がなお残るうらみはあるが、当初立案した計画・課題をほぼ遂行し、Empfindnis概念について、おおよその見取図を描きえたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を、新型コロナウイルス感染拡大のため延期になった国際学会で発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため延期になった国際学会への参加費に充当する。
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Research Products
(3 results)