2021 Fiscal Year Research-status Report
Empfindnis概念の系譜学的検討―美学の「感性論的転回」への概念史的寄与
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18K00126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 卓史 京都大学, 文学研究科, 准教授 (90644972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Empfindnis / ジンメル / 閾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前世紀末以降進展中の美学の「感性論的転回」に掉さしつつ、「感性」に関連する重要な概念であるEmpfindnis(「感覚態」「再帰的感覚」「感覚感」などと訳される)に系譜学的な検討を加えるものである。本年度は、昨年度来の課題である、フッサールにおけるEmpfindnis概念の出所と18世紀のEmpfindnis概念との連関について、引き続き検討した。ただし結論から言えば、これを直接的・実証的に示すには至らなかったので、視点を変えてEmpfindnisに関連すると思われる概念の系譜を豊穣に描き出すことに努めた。 そのために注目したのが、フッサールと同世代のジンメルの美学であり、特にそれを支える「閾(Schwelle)」、すなわち、徴表や刺激などの「量」が「質」へと転化する現象の概念である。ジンメルは、この概念を駆使して、美的なものを含むさまざまな高次の精神現象を論じている。その背景にあるのは、一方でマルクス(主義)経済学、他方で「下からの美学」で知られるフェヒナーの精神物理学である。さらに、このような徴表や刺激などの「量」が「質」へと転化する現象に依拠して美や崇高といった美的性質を説明する試みは、バウムガルテン(「外延的明晰性」の概念)やカント(崇高論や美的理念論)といった18世紀の草創期の美学にも看取できる。こうした諸点を掘り下げていくことにより、「感性」をめぐる諸概念の複線的で豊かな系譜を描き出すことができるだろう。 以上の諸点を9月にオンラインで開催された第8回地中海美学会(国際美学連盟中間会議)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、本年度の研究成果は国際学会で発表し、その原稿を加筆修正したものを提出したが、プロシーディングスの出版が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記国際会議組織委員会によるプロシーディングスの編集を待ち、修正要請があればそれに応じる。
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Causes of Carryover |
研究成果の公表のために参加を予定していた国際学会がオンライン開催となったため、旅費が不要になった。プロシーディングスが編集中のため、修正依頼が来た際の追加調査費および外国語校閲費に充てる。
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Research Products
(3 results)