2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Genealogical Study on the Concept of "Empfindnis:" A Concept-Historical Contribution to the "Aisthetical Turn"
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18K00126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 卓史 京都大学, 文学研究科, 准教授 (90644972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Empfindnis / 人間学 / 美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前世紀末以降進展中の美学の「感性論的転回」に掉さしつつ、「感性」に関連する重要な概念であるEmpfindnis(「感覚態」「再帰的感覚」「感覚感」などと訳される)に系譜学的な検討を加えるものである。再延長した本年度は、研究のまとめを行った。昨年度の報告書に記した、ジンメルの「閾」の美学について論じた原稿を含むプロシーディングスはなお出版されていないが、これは組織委員会側の問題であり、いかんともしがたい。これについては、ジンメルがもともとこの概念を論じたのが『貨幣の哲学』であったことから、切り口を「貨幣」に変えて論を組み直し、年度末の貨幣と芸術をめぐるコロキウムにて発表した。 その他、メンケ『力 美的人間学の根本概念』の翻訳・解題執筆を通じて、美学の誕生と展開、そしてその意義を従来とは異なる角度から明らかにしたが、これは一昨年年度以前に集中的に研究した18世紀におけるEmpfindnis概念の展開を補うものである。日本18世紀学会が編集・出版した『啓蒙思想の百科事典』で「美学の誕生」の項目を担当したことも、これに連なる。さらに、カントの人間学講義開講250年を記念して開催された日本カント協会でのシンポジウムでは、カントの人間学講義開講の「前史」とでもいうべき状況を1760年代のカントとヘルダーとの関係に即して描いたが、これもやはり、18世紀におけるEmpfindnis概念の展開を補うものである。これらを通じて、18世紀におけるEmpfindnis概念の展開の周辺状況を明らかにしえたと総括する。
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Research Products
(5 results)