2020 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける大正琴の受容と変容に関する民族音楽学的研究
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18K00130
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
梅田 英春 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (40316203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大正琴 / マンダリオン / 南スラウェシ州 / マカッサル / インドネシア / スラウェシ島 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は昨年度のスラウェシ島中部への大正琴を起源とする楽器の予備調査のデータに基づき、3週間のフィールワークを行い、スラウェシ島の一部に伝承するマンダリオンの調査を行う予定であったが、スラウェシ島における新型コロナウィルスの蔓延および、インフォーマントの罹患、また海外渡航ができなかったことから、目に見える形での研究実績をあげることができなかった。 また現地では演奏活動が止まっており、オンラインを通してアンサンブルの収録を考えたが、集落において複数の人数による演奏が禁止されていたことから、演奏者ごとのインタヴューのみを行った。60代の演奏者は、初期の大正琴には山、海、木が描かれていたことを記憶しており、戦前から戦後にかけて、海と松の木と富士山が描かれた日本の大正琴がスラウェシに伝えられていたことがわかった。また、そうした楽器は、中国系の商人により持ち込まれ、マカッサルの楽器屋兼スポーツ用品店で販売されていたことがわかった。 またインタヴューから、現在、マカッサルにある南スラウェシ州の文化局により、マンダリオンの普及活動が文化政策の一環として開始され、数少ない楽器製作者に対して、文化局より大量の注文があることが明らかになった。ピアノや電子オルガンが高価であるゆえ、教育機関で購入できない現状から、現在のインドネシアでは鍵盤ハーモニカが音楽教育に普及しているが、そのかわりに、伝統的な楽器であるマンダリオンを使用させようとする狙いがみられる。ただしこの製作についても感染症により予定通り進行していない。こうした政策については今後の調査により明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は本研究の中心に位置づけていたスラウェシ島の調査が、海外渡航が禁止されたことから全くできなかったことで、調査は予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の中心に位置づけていたスラウェシ島の研究は、インドネシアの渡航が引き続き許可されない限り、今年度も実施できない可能性がある。それゆえにフィールドワークをともなわない以下の2点の研究に変更することも考えている。 1)インフォーマントが演奏している映像からの研究 感染症が流行する以前に演奏をしてもらった映像があるため、その映像から演奏法などを明らかにする。 2)ロンボック島の楽器マンドリン、プンティンの研究 すでに手元にあるロンボック島の大正琴を起源とする楽器マンドリン、プンティンの楽器研究を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度の主要な支出内容は3週間にわたるインドネシア、スラウェシ島へのフィールドワーク関連費用であったが、海外渡航ができなかったことから使用することができなかった。次年度使用額が発生したのはこの理由からである。
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