2022 Fiscal Year Research-status Report
プロティノスのアイステーシス論における像と痕跡の機能
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18K00134
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関村 誠 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (20269583)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 痕跡 / 型 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロティノス思想における痕跡の概念の機能について、とりわけ第19論文「徳について」に着目し、その解釈についての前年のイタリア・シラクサでの研究発表をもとに、さらに考察を加えて"Virtues and Assimilation to God in Plotinus"と題して論文として投稿し、選考の結果採用され、Ageless Arete (Selected Essays from the 6th Interdisciplinary Symposium on the Hellenic Heritage of Sicily and Southern Italy), edited by Heather L. Reid and John Serrati, p. 315-330に公刊することができた。第19論文において、徳は知性界へ向けて「神に似る」という哲学の究極目的の遂行のために重要な役割を果たしており、知性的レベルを分有する感性的レベルに印づけられたものが痕跡として捉えられ、知性的なものへと魂を方向付けていく機能が印影として表されていることを論じた。この徳との関係における痕跡の機能の考察の後、第28論文「魂の諸問題について(第二篇)」における「魂の痕跡」が、魂と肉体の関係において果たしている役割についてテキスト分析による考察を始めた。そのために、第26論文「非物体的なものの非受動性について」および第27論文「魂の諸問題について(第一篇)」を検討して、肉体と区別される魂は非受動的であり、変化を被ることはなく、他方で情動自体は魂ではなく肉体に生じることを主張するプロティノスの議論を分析・検討した。その基盤の上で、肉体と区別される魂がいかにして肉体に生を与えているのかという観点から、魂が魂としてとどまりながらも自らの痕跡を送り出しており、魂と肉体の関係に寄与している機能について考察することができた。その考察結果をThe 8th Interdisciplinary Symposium on Hellenic Heritage of Sicily and Southern Italyにおける発表のために要約を作成して投稿し、次年度の発表が承認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロティノスの痕跡の概念を含んだ徳論の解釈を進めて論文発表に至ることはでき、さらに魂論における痕跡の機能についてテキスト解釈を進めることはできたが、コロナ禍により、研究発表のための海外出張ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
プロティノスにおける像と痕跡の機能とそれが肉体の活動に及ぼす活動に関係する魂論のテキストの解釈をさらに進め、海外出張により、すでに参加・発表が認められているThe 8th Interdisciplinary Symposium on Hellenic Heritage of Sicily and Southern Italyにおける"Mind and Body"をテーマとした学会で口頭発表を行う。
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Causes of Carryover |
計画した海外出張ができず、旅費を使用することができなかった。次年度は、出張の旅費を使用する。
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Research Products
(1 results)