2022 Fiscal Year Research-status Report
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18K00135
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
高瀬 澄子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60304565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音楽論 / 琉球古典音楽 / 日本音楽史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、口頭発表「『顧誤録』「学曲六戒」は『歌道要法』に影響を与えたか」(東洋音楽学会第71回大会、2020年11月8日、東京音楽大学、オンライン開催)の補足調査を行った。 『歌道要法』(安冨祖正元、1845)には短い本文と長い本文の二つの異なる本文の系統があるが、長い本文の系統には、漢籍として、楊時編『二程粋言』、『後漢書』列伝、『書経』舜典が引用されており、琴の思想の要素が認められる。そこで、高津孝・榮野川敦『増補琉球関係漢籍目録』(2005)等の先行研究により、琉球における漢籍受容の状況を調査した。その結果、尚家継承古文書に『後漢書』、楚南家文書・宮良殿内文庫等に『書経体註』等が所蔵されていたことを確認したが、『二程粋言』については確認できず、二程(程顥・程頤)のその他の著作も見出すことができなかった。しかし、王府の資料や陳侃『使琉球録』「天妃霊応記」等には「程子」への言及が認められ、琉球において二程の思想が知られていたのは確かである。高津(2004, 2016)によれば、奄美の盛山家文書には朱熹『四書集註』が所蔵され、朱熹『四書集註』に基づく『四書体註』は、1762年頃には久米の明倫堂で教科書として用いられていた。朱熹『四書集註』には、「程子」による注が含まれる。したがって、琉球では、経書の注を通して二程の思想が知られていた可能性がある。しかし、『歌道要法』では「程粋言」という書名が明記されているため、経書の注ではなく、書籍から引用したものと見られる。 補足調査は続行中であり、未だ論文として投稿していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
延長年次(2021年度)にもう1年の延長を申請し承認されたため、2022年度は再延長年次に当たる。 再延長年次(2022年度)の計画として予定していたのは、『顧誤録』の『歌道要法』への影響に関する補足調査と論文の投稿であった。補足調査については、図書館の利用制限等はあったものの、ある程度達成した。しかし、論文の投稿については、達成できなかった。理由としては、年度の途中、状況の変化により、研究を一時停止し、その後の続行が困難になったことによる。そのため、研究計画の再々延長を申請し、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
再々延長年次(2023年度)は、補足調査を続行し、まず、再延長年次に達成できなかった論文の投稿を行う。次に、もし可能であれば、先行研究で参照されていない『歌道要法』の写本の翻刻を行いたい。さらに、当初の研究計画では予定していなかったが、現在の伝承にも目を向け、琉球古典芸能の基本的な演目について、動画の作成と公開を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、補足調査の続行が困難になったからである。再延長年次の使用計画で予定していた研究者間の対話や交流には、学会への参加等、ある程度使用した。 再々延長年次(2023年度)は、補足調査や論文の投稿、動画の作成と公開等に使用し、長引いた研究を総括したい。
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