2019 Fiscal Year Research-status Report
Reception History of the Cimbalom in Hungary (1867-1918)
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18K00136
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
太田 峰夫 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (00533952)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ツィンバロム / ハンガリー / 二重君主国 / 市民階級 / 「伝統」の創造 / ロマ / 楽師 / 中東欧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はツィンバロムと19世紀のハンガリー民衆劇との関係について、資料の収集と読み込みを行った。また、楽器の弦の配置についても細かく調べ、ペダル式ツィンバロムの開発者であるシュンダが、この点においても重要な業績を残していたことを確かめることができた。また、Giffordの著書を手掛かりに、ポーランドやロシアにおけるツィンバロム演奏について調べ、この楽器が中東欧の楽師たちの文化全体に深くかかわるものであることも確認できた。 2019年8月、および2020年2月に訪れたブダペストでは民族音楽研究者のブラウエル・ベンケ・ヨージェフ氏(科学アカデミー音楽学研究所)や近代ハンガリー社会史研究者であるケヴェール・ジェルジ教授(ブダペスト・エトヴェシュ・ロラーンド大学)らと話し合う機会を得、本課題の方法論上の問題や隣接分野との関連性を明確にすることができた。何よりも話し合いの中で、本研究課題が「近代社会における伝統文化の受容」という大きな問題圏に属するものであることを確認できたことは大きい。また、衣服における「国民的服装」の流行を扱ったルカーチ・アニコーの研究のように、ナショナリズム的な運動を一種の「流行」ととらえかえす発想も、本研究に取り入れるべき視点であるのを痛感した。 あとはこれを結果につなげることのみである。今年度は具体的な研究成果を発表できなかったので、次年度はツィンバロムと19世紀のハンガリー民衆劇との関係について、および弦の配置の変遷について、日本語の論文をぜひ執筆し、発表させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルカーチ・アニコーの19世紀服装史研究やブラウエル・ベンケ・ヨージェフによるイコノロジーを用いた楽器受容史の研究、ライナイ・エディットによる民衆劇場の研究など、本研究課題に隣接する同時代の研究を知ったことで、大きな刺激を得ることができた。これにより本研究課題が新たな段階に入ったことを実感している。論文の執筆が思うほどにすすまない問題はたしかにあるが、それでもこの一年が本研究にとって転換点とも言えるものであったことを申請者は確信している。 あとは収集した資料を整理し、論文を執筆する時間を確保するのみである。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目にはより具体的な研究成果が望まれる。次年度は問題を区切り、少しずつかたちにしていきたい。まずはツィンバロムと19世紀のハンガリー民衆劇との関係や、文学におけるツィンバロムの表彰などについて、日本語論文の執筆に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
申請者は新型コロナウィルスの感染拡大により、令和元年度末の研究活動を大幅に縮小せざるをえなかった。多額の次年度使用額が生じたのはそのためである。次年度(令和2年度)前半の研究活動においても活動の場所をほとんど国内に限定せざるをえないが、論文執筆をはじめ、やるべきことは多い。しかし年度の後半(おそらくは年度末)には、例年のハンガリーへの調査活動にくわえ、ハンガリーの学界(音楽学会と歴史学会)への発信も行いたいと考えているので、令和元年度の「次年度使用額」をそのための旅費に充てることを計画している。
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