2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Function and Development of Commercial Drama as a Modern Drama : Mainly on a Light Comedy and the Entertainment Industry
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18K00143
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中野 正昭 明治大学, 文学部, 兼任講師 (40409727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 商業演劇 / 大衆演劇 / 興行 / にわか(俄) / 戦時演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31/令和元年度は軽演劇の他に九州地方の「にわか」、特に佐賀と福岡の「にわか」の調査を手中的に行った。佐賀、福岡のいずれの場合も、郷土芸能だったにわかが商業化されるのは昭和に入ってからであり、なかでも戦時期の軍部等が主催した慰問巡業が職業劇団化・興行化を後押しした側面が大きいことが分かった。これは都市部の軽演劇が移動演劇によって都市郊外の小市民感覚とその趣味性を各地に広めたことと同じく、商業演劇・大衆演劇の興行拡大における戦時体制の役割を示すものである。 このうち佐賀にわかに関しては、二つの国際シンポジウムで研究発表『從「佐賀俄」看「九州俄」的傳 統及職業化(佐賀俄にみる九州俄の伝統と職 業化)』(台北)、『筑紫美主子と佐賀にわか』(東京)を行い、論文「筑紫美主子と佐賀にわか―九州にわかにみる地方大衆演劇の興行展開」としてまとめた。 また前年度に引きつづき演劇映像学連携研究拠点(文部科学大臣認定 共同利用・共同研究拠点事業)でエノケン(榎本健一)に関する共同研究を行い、公開研究会『エノケン喜劇の音楽とその時代』を開催した。そしてエノケンの最高傑作とされる舞台『最後の伝令』(1931年)について、これがエノケン劇団のオリジナル作品ではなく、アメリカ映画『陽気な踊り子』(1928年)のアダプテーション(脚色物)である可能性について論文「エノケン喜劇『最後の伝令』(1931)とフランク・キャプラ映画『陽気な踊り子』(1928)―喜劇にみるアメリカ映画のアダプテーション― 」としてまとめた。 これらの他に、帝国劇場歌劇部を指導したG・V・ローシーに関する新資料(絵葉書)を発見し、論文「G・V・ローシーとローヤル館の絵葉書」としてまとめた。知見の社会還元としては舞台『新宿ムーラン・ルージュ―赤い風車の回る劇場』で台湾人劇作家・林搏秋に関するエッセイを寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査については地方を含めてほぼ順調に進んでいる。本年度は、地方の商業演劇の調査・研究として、軽演劇ではなく九州にわかの興行展開を中心に行ったが、これも地方の商業演劇に関する新しい知見を得た上でのものなので、研究計画の成果に基づく新しい研究課題の展開と言うことができる。 ただし聞き書きに関してスケジュールの都合が合わず、一部で当初の予定を実現出来ていない。この点に関しては次年度で数を増やして達成する考えだったが、新型コロナウイルス拡大の影響により全てを実施するのが困難になった。従って、聞き書きの対象とその優先順位を再検討するなどして対応することとする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、昭和戦前~戦後期の東京を拠点とする商業劇団の地方巡業興行、関西・九州地方の興行会社の興行の調査をつづける。ただし資料調査と聞き書きについては、新型コロナウイルス拡大の影響により、東京・地方ともに計画の遅れが生じる可能性が高い。また、これまで台湾、韓国、中国の大衆演劇研究者と知見や情報の交換を行ってきた国際研究会、国際シンポジウムも同じ理由から支障が生じている。 これらの問題に対し、例年では地域毎に併行して進めていた資料の所蔵調査・収集だが、次年度は次々年度を含めた所蔵調査を先行して進め、収集は新型コロナウイルス収束後にまとめて行うように研究出張等を一部変更する。また聞き書きや他の研究者との情報・意見の交換は、web会議を利用するなどして可能な限り計画通りに進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた海外研究出張(台北)が新型コロナの影響で渡航できなくなり、旅費等が未支出となって次年度使用額が生じた。次年度使用額については、令和2年9月または令和3年2、3月に研究出張を再計画し、支出するものとする。
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